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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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参謀官マルティナ-3


斬りつけられた蠢く蛇ほどの太さのものが、ぼとりと地面に落ちてのたうつ。

捕まえられている2人の兵士は、太い腕を覆っている蠢くものに、すでに絡みつかれていた。

3人の兵士が叫び声を上げながら、異形のものを斬りつけ続けた。

「うわっ、目が、目がっ!」

斬り離された蠢くものから、血のようなものが吹き出し、斬りつけていた兵士の1人が目を押さえてふらつくと、背中あたりから這い出た蠢くものに絡みつかれてしまった。

残った2人の兵士が吹き出したものに肌を焼かれながらも、剣を異形の左右から脇腹のあたりに突き刺した。
突き刺したまま、蠢くものに絡みつかれていく。

5人の兵士が取り込まれている間に、弓兵が包囲して弓を射る。5人の兵士にも弓矢が刺さるが、異形のものにも今度は弾かれずに矢が刺さる。
頭部に3本刺さったまま、5人の兵士を取り込み続けながら、異形のものは咆哮した。

「ふぎぃぃぃぃっ!!」

矢を射った弓兵が、その咆哮と同時に走って撤退してきた。
逃げ遅れた弓兵の足首に這い出た蠢くものが巻きつき、ずるずると異形のものへ引きずられて引き寄せられていく。

残りの弓兵が矢を射るために近づいていたが、射る前に這い出たものにずるずると引き寄せられて悲鳴を上げいる。

王はその混乱の中を、槍を構えて単騎で突撃をかけた。
王の馬の脚が這い出たものに絡みつかれる前に、王の槍が異形のみぞおちの位置あたりを貫いていた。
王は異形の脇をすり抜けてから落馬したが、起き上がり腰の剣を抜いた。
馬が蠢くものに引きずられて、怯えた鳴き声を上げていた。

その場にいた兵士たちや王の駿馬は異形のものに飲み込まれてしまった。
兵士たちや馬の骨が砕かれる生々しい音が響いている。
兵士や馬を取り込んた異形のものが、大きさが増していくのを王は見た。

王の槍がまだ突き刺さっている。
王は足元に這い寄るものを斬り払いながら、呪文を詠唱し続けた。

槍が炎に包まれると、異形は立ち上がったが、そのまま全身を炎に包まれた。
異形のものが肉を焼かれる臭気混じりの白煙が上がっている。
槍が溶け消えた頃、槍が貫き焼いた穴がある全身が焼け爛れたメスのオークが立っていた。

王の剣を持つ腕に巻きついていた妖しく蠢くものが崩れて消えた。
王が激痛に顔を歪め、両膝をついて巻きつかれていた腕を見る。甲冑が腐蝕して錆び、鎧の中の腕には巻きつかれていた形に赤く痣が浮き出ている。

メスのオークがゆっくりとわずかに口を開くと、そこからも煙が立ち昇る。その口元は笑っているように牙が見える。
オークの両目も炎に焼かれ、穴となってしまい、そこからは人間と同じ赤い鮮血が流れ出ている。オークの口からも、鮮血がごぼりと溢れ出てきた。

王は剣の柄を握ったまま離せず、手が固まってしまったようになっていた。
王だけがひとり、必死にふらつきながら帰還した。

腐った水が満ちた大湿原でも使われた解毒の魔法も、王の傷には効果がない。王は天幕の中で、全身の発熱と腕の激痛に苦しめられていた。

これは呪いではないか、と王の旅に同行していた神聖教団の僧侶たちは判断し、急いで王が異形のものと遭遇した丘陵へ向かった。

丘陵で見つけたメスのオークの死骸はまだ立ったまま、腐敗し始めていた。
僧侶たちは死骸に、祟りを鎮める祈祷を行った。
祈祷を寝ずに夜明けまで続けると、朝日を浴びた腐った肉が地面の上に崩れて、丘陵の草を急激に枯らした。
骨が剥き出しになり、取り込まれた兵士の錆びた剣や壊れた弓なども腐った肉の中に混ざっていた。

腐った肉やオークの骨、破壊された武具などが、変色した土にずぶずぶと吸い込まれて消え去る。
肉山があったところだけが、草が枯れた黒土が剥き出しになっていた。
大地と風と日の光が呪いをどこまで浄化してくれたかわからなかったが、王の野営地に急いで戻った。

王は高熱と激痛から脱していた。だが、手首から上腕まで巻きつかれた傷痕が、黒ずんだ痣となって残っていた。

呪われた王を死ぬものと見限り、丘陵を避けて、森の中を進んだ者たちは、もっと南に住んでいた者たちに捕らえられ、蛇神の神殿へ連行された。

蛇神を信仰する者たちの神殿の街から脱走して、必死に野営地まで引き返してきた者が1人だけいた。
王は南に街があり、女神ラーナではない別の神を崇める者たちが暮らしていることを知った。

王は僧侶にエルフ族へ助力を求める書状を持たせて樹海へと向かわせた。王の槍はエルフ族から授けられた武具であり、戦いで失われたことも伝えなければならなかった。

樹海を目指す僧侶たちが立ち寄った土地の民は僧侶たちからどこから来たか話を聞いた。
話を聞いた民は戦から逃れるために故郷を捨て、王の旅をした道のりを頼りに、平原地帯から新天地を求めて野営地に集まってきた。

やがてエルフ族の助力を得て、異形のものと遭遇した丘陵の草の枯れたままになっていた場所にはダンジョン、野営地には街が建造され、平原の滅びた小国の王はゼルキス王国を建国した。

「初代ゼルキス王が、異形のものに呪われ、命を落としかけたことや、女神ラーナではない半人半蛇の神を信仰する者たちがいたことは、王家には伝えられているが、民はすっかり忘れてしまった」

マルティナは王家に伝わる古い伝承を、レアンドロ王から聞いた。

「マルティナはオークが存在すると信じるのかね?」

ゼルキス王国では幼い子供を親が叱るときに「悪い子はオークにさらわれるよ」と怯えさせる。

王の槍は男性の性器の象徴であり、メスのオークは、もともとこの地にいた女性を喩えたもので、移住した男性がこの地にもともといた女性を犯したところ、何か悪い病気にかかったと、レアンドロ王の話を知識が足りない学者が聞けば、昔話か寓話だと解釈するかもしれない。


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