投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

玉子焼き
【純愛 恋愛小説】

玉子焼きの最初へ 玉子焼き 4 玉子焼き 6 玉子焼きの最後へ

玉子焼きリターンズ-2

「え…?あ、ありがとう。」

私は傘の中に一人分スペースを作ると、鷹端くんを迎え入れた。

「ところでこの犬…。さっきからずっと暖めてるのにずっと冷たいんだ…。」

「それって…もしかして…?」

「………。」

鷹端くんはうっすらと目に涙を浮かべて頷く。

「急いで。走ろ。」

大雨の中、私と鷹端くんは思いっ切り走った。傘をさしている意味は既に無く、ずぶ濡れになりながらもひたすら無言で走った。





「やっと……着いた……。早く診て貰おう。」

「う、うん」

「お帰り此華!ってこの人とこの犬は一体?まさか…彼氏!?」

家に入るなり、いきなり父からのマシンガントーク。

「ち、違っ!!…じゃなくて、この犬診てあげて!!」

父がいきなり獣医の目になり、まじまじと犬を見つめる。


「……むぅ、もう遅いぞ。残念ながら…私の腕でも亡くなったものを生きかえらすことは出来ない。」

「そんな…遅かったの…?鷹端く…!?」

「うわぁぁぁぁぁ!!!!」


犬が亡くなったのを知ると鷹端くんはいきなり叫び、泣き出した。

「また…また大事な命が亡くなった…。もう死ぬのを見るのはイヤだ!!」

「鷹端くん…。」

鷹端くんは『また』って言葉を使った。きっと過去にも自分の大事なものをなくしたのだろう。命をとても大切に考えてる鷹端くんを見て、なぜか凄く愛おしく感じた。暖かい人なんだな、って。

「鷹端くん。」

ぽふっと鷹端くんを抱きしめる。優しく。

「泣かないで?失ったものは二度と帰ってこない。諦めろとは言わないけど、一区切りつけなきゃ。それまでいっぱい泣いていいよ?」

「………ッッ…。」

一瞬驚いたように体を震わせたあと、声を噛み殺すように泣いていた。

「……よしよし…。」


玉子焼きの最初へ 玉子焼き 4 玉子焼き 6 玉子焼きの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前