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彼の手の中
【学園物 恋愛小説】

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彼の手の中<第一話>-3

右頬に、小さな傷。思っていたより、長い睫毛。「なに?」
滅多に無い機会だと横から盗み見ていると、宮川がいきなりこちらを向いた。
「早瀬さんさ、もう一人で江上のとこ行くのやめなね」
「う、うん」
「あと変な噂とかさ、気にしない方がいいよ。きっとみんな早瀬さんのこと気になっちゃうから、いろいろ言ってんだよね。早瀬さん、綺麗だもんね」
「…は?」
「そうやって気付いてないとこが良いよね。早瀬さんって本当はいい人だよね」
宮川が眉一つ動かさずに語る。せっかく二人きりの重要な場なのに、私の顔は崩れ果てているに違いない。
「私が、いい人?」
「誰も見てないときでも落ちてた消しゴムとか拾ってあげるし、売店のおばちゃんから物受け取るときに毎回『どうも』って言うし」
「何それ、なんでもないじゃん…」
三歩目で、隣に宮川がいないことに気が付いた。振り返ると、立ち止まり、微笑んでいる宮川がいた。
「そういうのって、意外とできないことなんだよ。みんな何するんにでも見返りばっかり求める」
再び、宮川が歩き出す。謎に包まれた彼に、私はひたすら戸惑った。そもそも、なぜそんなことを知っているのだろう。
「一年生の頃、学校祭の準備中に、オブジェ倒して焦ってる奴のこと手伝ったでしょ」
「…覚えてない」
「あれ俺だったんだよね」
「え!?」
必死に記憶を辿ってみたが、何も思い出せなかった。私が宮川を好きになったのは三年に同じクラスになってからで、それ以前の彼を全く知らないのだ。
「噂と全然違うから、びっくりした」
「へぇ…」
「彼氏いるの?」
突拍子もない質問にむせ返る。この人は一体…
「なんでそんなこと」
「いないなら告白しようかと思って」
ついに躓いてしまった。目の前が真っ白になる。宮川が何を言っているのか、何が起こっているのかわからない。
「あ、今のが告白になっちゃうね」
宮川がわざとらしく手を叩いた。私は激しく痛む頭を押さえる。
「ごめん…意味がよく…」
「簡単だよ。宮川健斗は早瀬咲智が好きってこと。あの時からずーっと」
「…はぁ」
「んじゃ、次。早瀬咲智は誰が好きなの?」
「…宮川」
「あらま、両想いだ」
「…で?」
「今から早瀬咲智と宮川健斗は恋人同士ってことだね」
「…えぇ!?」
やっと状況を理解したが、同時に焦りは激しくなった。宮川と私が恋人同士。妄想さえしなかった現実についていけない。
「で、嬉しくて堪らないからキスさせてってこと」
「は!?無理!死ぬ!」
「殺してやる」
視界が真っ暗になる。宮川の唇が私の唇に触れていた。心臓が異常な速さで波打つ。私、本当に死ぬかも。
「これから、よろしくね」
宮川の腕に抱きすくめられる。い、言わなきゃ。こちらこそよろしくって。すごく嬉しいって。
「…はい」
私は情けなく震える声で、なんとかそれだけ答えた。


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