投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

一番
【その他 恋愛小説】

一番の最初へ 一番 0 一番 2 一番の最後へ

一番〜出会い〜-1

「ごめんな…」
これが彼の最後の言葉だった。私は彼の一番にはなれなかった。

「ゆり明日空いてる??」去年の8月、親友マキからの誘い。
明日は私の21回目の誕生日だ。
「うん。パーティーしてくれるんでしょ??(笑)」
マキはバイト先である六本木のクラブで私の誕生日パーティーをしてくれると言っていた。
クラブは初めて行くが、マキがいるということで抵抗はなかった。
「そう!みんな会いたがるからさぁ〜ノリはいいから安心して☆」
これが出会いになるなんて思ってなかった。

8月24日20時45分。きっとこの日の事は忘れない。

私はマキと六本木の駅で待ち合わせ、会場となるクラブへ向かった。
店に着き開けっぱなしのゲートをくぐると螺旋状のパイプ階段があり、二人で地下へ降りた。
降りたそこには、もう一枚真っ白の分厚い扉があった。
マキがその扉を開いた瞬間、大音量の音楽と大勢の声が耳を襲った。
「ゆり大丈夫〜?!とりあえずカウンター行こ」
人の波を掻き分けてやっとの思いでカウンターにたどり着いた。
マキがビールを取りに中へ入り私は端から二番目の椅子に腰掛けた。
「はいよ!どぉよ初クラブは??」
マキが少し小さめの瓶ビールを差し出しながら言った。
「最初は鼓膜破れるかと思ったけど、嫌ではないよ」私の言葉にマキは満足そうに笑い、カウンターの中の同僚たちに私を紹介し始めた。
一人、二人、みんな私より2、3歳上で共に明るくすぐ打ち解けられた。
そしてカウンターの奥から三人目が出てきた。
瞬間…
周りの雑音が消え、合った瞳がそらせなかった。
「ここの頭やってる三村さんみんなミムさんって呼んでるよ〜(笑)」
マキの声で引き戻された。「ゆりちゃんだっけ?いつもマキから聞いてるよ〜どぉクラブは?」
雑音だらけのはずなのに彼の優しい低い声はハッキリ聞こえた。
「あ、はい!!大丈夫です!!」
訳の解らない返事をしてしまった。彼は黒目がちな奥二重の瞳で笑った。
私はこの人が好きだ。決まっていたかのように私は彼に魅かれた。

それから2、3時間カウンターで飲んだりフロアで踊ったりと楽しい時間が過ぎた。
ただ、どんなに騒いでも彼が近くに来ると顔全体に火が付いたかのように熱くなり、心臓は握り潰されるのではないかと云うほど波打った。
満員だったクラブの人垣はいつの間にか大分減っていた。
時間は3時を回っていた。私は飲んで踊ったせいか気持悪くなり店の奥にある大きめのボックスソファに寝転んでいた。
マキも相当飲んで騒いだらしくカウンターでダウンしていた。
マキの同僚たちは顔馴染みと思われるお客と談笑したり片付けをしたりしていた。
私は目を開くのも億劫で横向きに寝転んで目を閉じた。
10分程たっただろうか、オデコにひんやりとした感覚、目を開けると彼が水の入ったグラスを持って微笑んでいた。
「平気?かなり飲んでたなぁ」
「うん。でも大丈夫。」
「楽しかった?誕生日。」「かなりね〜想い出に残る21回目の誕生日だった〜」「21歳?じゃあ俺の10個下か〜若ぇなぁ(笑)」
今まで付き合ったり好きになったりした人は10歳も離れてなかったなぁとフッと思った。
そして何故だか二人の間に線を引かれた気がした。


もう…遅い。


…続く


一番の最初へ 一番 0 一番 2 一番の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前