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恥ずかしの高校ミスコン
【学園物 官能小説】

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審判者-5

 だが、次の瞬間に起きたことは、彼女にとって思いもかけぬものだった。
 大きく開かれていた美景の両脚を、理事長の大きな手がゆっくり優しく閉じさせたのだ。
「え?」
 美景は思わず目を開いた。このまま純潔を奪われてもおかしくないと覚悟していた彼女にとって、それは何のつもりかわからなかった。

「あ、あの……これで、終わり……なんですか?」
 彼女は恐る恐る尋ねた。まだほとんど放心状態のままだった。
「当たり前ではないか。君のからだが学園一美しい娘にふさわしく、清らかであることを確かめたのだ。審査はこれで全て終了だ」
 そう言われても、美景は本当にこれ以上のことが無いとはまだ信じられない。本当に今までのことは、ただの「品行審査」でしかなかったなどとは。

「え……理事長、私に何か、しないのですか……?」
 直接的な表現で訊くのは憚られた。いまだ裸身をぶるぶると震わせた状態は、あたかも猛獣を前にした小動物のようだった。
「君は何かとんでもない思い違いをしていないかね?」
「え? あの……」
「君の大切な純潔が、まさかここで失われるとでも?」
 なお怯えが覚めやらず、彼女は「違うのですか?」などとも怖くて訊けない。
「ミス和天高として学園を代表する娘が、清らかな身でなければならぬと私は言った。それをあろうことかこの私が穢そうとでも思っているのか?」

 ようやく美景も自分がここで凌辱されるわけではないことが少しは信じられて、やっと人心地がついてきた。
「君の美しさ、恥じらう姿の可憐さは、ここまで存分に見せてもらった。素晴らしい。乙女の純潔とは愛でるものであって、奪うものではない。穢すなど、もったいないじゃないか」
 理事長は本当にそのために、ここまでのコンテストを行ったというのか。まだ戸惑うばかりの美景だった。

「本学園を代表する女生徒として、その清純さは大事にしなさい」
 優しく言葉をかけられ、彼女もようやく安堵の息をつく。
「はい、あ、ありがとうございます……」
 本当にそんなふうに感謝を言っていいのか、美景にもよくわからなかった。これまで彼女にあんな恥ずかしい思いをさせてきたコンテストの主催者なのだ。だが、それでも言わずにはいられなかった。 

 そして三田村が手で合図すると、昭代が紙バッグを持ってきて、美景の横に置く。
「じゃあ、着なさい」
 三田村が穏やかな声で言う。バッグにはこれまで脱いだ彼女の服が一式、入っていた。
 美景はまだ震えが残る手でそこからまず下着を取り出し、身に着けた。ようやく全裸から解放された。梨佳も同じように服を返され、着始めている。

「山西くん、君は準ミスだ。君もずっと、純潔な娘であってくれ」
「は、はい、理事長……」
 梨佳にもまた、同じく優しいまなざしとともに声をかけた。梨佳は恥ずかしそうに頷いた。

「私は苟もこの和天学園の理事長だ。その名と教育者の誇りにかけて、学園の純潔な女生徒をけがすようなことは決してせん」
 三田村はそう、決然と言い切った。

「だが、すでに穢れを知った娘であれば話は別だ」
 やおら目を奈津江の方に転ずると、三田村はそれまでとは全く違った調子で断じる。
「守るべきものを捨てた女であれば、どのように穢そうが同じことだ」
 三田村はさっきまでの優しい目とは、明らかに違うまなざしで奈津江を見据えていた。

 美しい処女を穢すのは惜しいから、ただその可憐さを愛でる。だが純潔を捨てた女であれば、それからどう穢そうがすでに穢れているから構わない。それが三田村の独自の、そして決して譲れぬ信念なのだった。
 その信念に違わず、清純無垢な美少女の裸身を目の当たりにしてもそれを剥き出しの欲情の対象にしないとは、この男は一面では物凄く理性的な人物なのだろう。

 こうして和天高校のミス・準ミスに決まった美景と梨佳は、服を着終わると昭代と、室外で待機していた女性教師2人に付き添われて、理事長室を後にした。
 ひとり残されたのは、全裸のままの奈津江だった。

 一度第一会場の会議室に戻った2人は、それぞれの表彰状を渡された。美景には学費免除に関係する手続き書類一式も添えられた。優勝者には学費が免除されるという件は、嘘ではなかったのだ。
「2人ともおめでとう。気をつけて帰りなさいね」
 祝福されるようなこととはとても思えなかった。だがともかくも、美景にとって忌まわしい時間はようやくにして終わりを告げた。

 これまで受けた辱めの数々が頭に去来し、まだ気持ちを落ち着かせきれはしない。だがまずは解放された安心感をかみしめて、彼女は梨佳ともども校舎を出て、人のほぼいない日曜日の学校を後にした。
 校門を出て振り返ると、2人は互いを見つめあった。今さらのように、美景も梨佳も涙が溢れ出てくる。すべてが終わった解放感、思い出される恥ずかしさと屈辱、いまだ覚めやらぬ恐怖など、さまざまな思いが入り混じってこみ上げてくるのは、2人とも同じだった。
 そしてどちらから求めるともなく、彼女らは互いに抱きしめ合った。


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