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夜宴
【SM 官能小説】

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夜宴-5

扉の音がしたわ。女は帰ったみたいでございますね。これでやっと先生とふたりきりになれますわ。えっ、わたくしが想っているあの男のことをもっと聞きたいって。どこまで彼のことをお話したかしら。ええ、あの男がわたくしを夜宴に捧げたことはほんとうのことだと思っておりますわ。なぜならあの男はわたくしの前に跪いて、わたくしの足首に接吻をしてこう囁いたのでございます。あなたのことをもっともっと知りたい。そのためにあなたを夜宴にお捧げしたいって。確かにそう言いましたわ。だから夜宴の女は鏡の中のあの女ではなく、実際はわたくしだったのでございます。そのことを毎夜のように考えていますわ。でも彼が鏡に映ったあの女を、もしかしたら抱いたことがあるかもしれないなんて考えたら朝まで一睡もできません。なぜって、鏡の中のあの狡猾な女はわたくしからあの男を奪おうとしているからですわ。わたしにはわかるの。先生は、わたくしが妄想をいだいているのではないかとおっしゃるの。こんなにわたくしが苦しんでいるのをそんなふうに思っていらっしゃるのね。でもわたくしが言っていることは事実なのですから信じていただきたいわ。わたくしは、あの女がわたくしからあの男を奪って抱かれようとしていることがゆるせないの。ええ、先生がおっしゃるようにわたくしは誰よりもまして嫉妬深い女かもしれないわ。もしかしたら嫉妬以上にあの女を憎んでいるかもしれませんわ。

あのときのことを思い出しますのよ。彼は、わたくしの足首にキスをしたあと、わたくしに首輪を嵌め、今度はわたくしを跪かせました。そして優しくわたくしの髪を撫でながら顔をじっと見つめて、わたくしの唇がとても魅力的だなんて囁いたのでございます。そしてわたくしの鼻先に、ズボンの中から彫の深い、たくましいペニスを堅く勃起させ、差し出したのでございます。そそり立った男性のものって、わたくし、ほんとうはあまり好きではないのですが、すでにそのときの彼のものはわたくしを感じたように漲(みなぎ)っていて、でも、それは大きすぎることもなく、かといって小さすぎることもなく、えらのような肉縁が深く刻まれ、とても輪郭の整ったものでしたわ。 
彼がどんなことをわたくしに望んでいたか、もちろんわかっていました。彼のペニスに操られるように自然とわたくしの唇が開いていったのがとても不思議に感じられました。もちろんこんな恥ずかしいこと初めてでしたわ。舌をふくらんだ亀頭に添えるようにして唇に挟み、舌の先で触れていると、ペニスの肉感とともに彼のぬくもりがふわりとわたしの唇を犯し、まるで彼と接吻をしているような甘い感覚が体に伝わってきましたわ。もちろんそんなはしたないことをわたくしはそれまでしたことがありませんでした。彼のものを咥えたとたんにわたくしは男の肉体にがっしりと支配されてみたいで、体の深淵に泉がほとばしるような甘美な亀裂を感じたのでございます。わたくしはいつのまにか目を閉じて、彼のペニスを貪るように舌をからませ、吸い、しゃぶり、夢中で彼のものを甘噛みしていました。そう、自分でも信じられないくらいとっても長い時間。
ところが彼のものを唇に含んでいると思っていたら、いつのまにか男のペニスはわたくしの口の中から消えて、はっと気がついたら、どこからか女の喘ぐような声が聞こえてきたのでございます。それはまちがいなくあの女が彼に抱かれているよがり声でしたわ。ギシギシとベッドが軋む音と、女と男が交わるときのピチャピチャといういやらしい音が混じりあい、耳をふさいでもあとからあとからわたくしを嘲笑うかのように聞こえてきますの。わたくしはいつまでも続くその音にひと晩中、苦しめられ、一睡もできないまま朝を迎えたのでございます。
それがわたくしの夢だとおっしゃるのかしら。ううん、わたくしは眠っていたのではなく、目覚めた状態で無意識にその女を感じていたわ。男に撫でられるあの女の耳たぶや唇、それに揉みしだかれる乳房、いやらしいほどそそり立った乳首や男のものに絡んだ湿った陰毛の匂いまで。ただ、あの女の肉体をもっと意識しようとすればするほど、はっきりとした女の姿が見えなくなりますの。そんなとき、女は鏡の中からすっと消えてしまうわ。だから女がほんとうはどんな顔をしているのか思い出せなくなるの。そしてしだいにその女の感触が煙のような気配だけになってわたくしの中に溶けていくのでございます。
 


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