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ショールーム・立てこもり
【鬼畜 官能小説】

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序章-3

 この所長、とにかく熱い男だった。赴任当初女性コーディネーターの制服はミニスカワンピースで、とにかくこれが不評だった。『時代遅れも甚だしい』『昭和の客室乗務員じゃあるまいし』『恥ずかしくて仕事に集中できない』・・・
 そんな悪評を聞きつけた吉田が本社の上層部に掛け合ってくれたのだ。『特例を認めるわけにはいかない』『予算がない』の一点張りの会社側に対し、前年比30パーセント増の売り上げを達成したらという約束を取り付けたのだ。
 不可能に近い数字だった。広大な台地が広がるこの地域は人気の住宅地で、新たな開拓の余地は残されていない。さらには都心や横浜を逃れた各メーカーが地価の安いこの地に営業所を設け、価格競争が勃発していた。
 そんな窮地を救ったのが、所長に男気を感じた女性コーディネーターたちだった。アドバイザーという本来の業務の合間に勉強会を開き、休日返上で顧客回りをくりかえした。『息子がリフォームすることになってね。会ってみるかい』『家を建てたいっていう友達がいるんだけど、紹介するよ』掃除のおばちゃんから出入りの業者まで、所長の人柄を知る多くの協力してくれた。
 売り上げは徐々に上昇し、社内の士気は飛躍的に高まっていた。ただ、『誠実』をモットーとする所長の指示で、強引な売り込みはしない。
「デザイン、機能性には大変好評をいただいているんですが、掃除がしづらいというお叱りも頂戴しておりまして・・・」
知られたくないこともすべてオープンにした。
「利便性を考えるなら○○社の製品がよろしいかと・・・」
時にはライバル社製の製品を勧めることもあった。
 そして1年後。至誠を尽くした営業が功を奏し、目標を大きく上回る数字を達成したのだった。

 新しい制服が届いた日、会議室でささやかな慰労会が開かれた。女性社員たちは皆それを着て参加した。
「所長、ありがとうございました」
「なあに、皆が頑張ってくれたおかげだよ」
一人一人と握手を交わす吉田の目には光るものがあった。女性たちも泣いていた。
 当時を知る社員も少なくなったが、その伝統は今も受け継がれている。

 


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