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『香奈子〜愛撫はオンブルローズに包まれて〜』
【その他 官能小説】

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『香奈子〜愛撫はオンブルローズに包まれて〜』-2

珈琲にチョコレートパフェ。灰皿。煙草。ライター。テーブルの上に乗せられた二つの手。
「紅茶じゃないの?」
 敬一が顎を上げ、薄紫色の煙りを吐きながら聞く。答えずに、ウエハースでチョコレートを掬いながら香奈子は笑う。
「バレンタイン…」
 ウエハースを敬一の口に運び、悪戯っぽい目で見る。小さく笑って、敬一が口に含む。二人だけの店内に、押し殺す様な笑い声が静かに流れる。
「疲れた?」
 香奈子の問いに敬一が首を振る。
「新幹線の中で寝たから。」
 カップに手を伸ばしながら、また煙りを吐く。癖のある、いつもの煙りの香りが、香奈子の胸に心地よかった…。

 左の手首を前に出し、敬一が時計を見やる。大きな手。そして、優しい手。何度も温もりをくれた、その手に小さな輝きを放つ指輪が光る。
「帰りのこと考えたら、あんまり時間ないな…」
 店の外の通りを眺めながら敬一が言う。目と目が合う。香奈子の瞬き。敬一の頷き。二人、席を立ち店を出る。敬一のコートのポケットに香奈子は手を入れる。肩を寄せ、自分よりも広い歩幅に合わせ、歩く。3ヶ月ぶり…香奈子の体温がゆっくりと上がり始める。これから過ごす敬一との時間。今まで重ねてきた敬一との時間。記憶と欲求が、香奈子の体を静かに揺さぶり始めていた。

 フローリング。パイプベッド。テレビ。カーテンのない窓。クローゼットにぶら下がる数本のハンガー。
「経費削減だそうだ…」
 レンタルマンション。ブーツを脱ぐ香奈子の背中で敬一が舌打ちをする。
「どれくらい居るの?」
 香奈子の問い。
「長くて5日間…」
 答えながら敬一が腕を巻き付ける。肩の上から右の腕。脇を抜けて左腕。首筋に頬。背中を抱き締められ、香奈子は次の言葉を奪われる。耳元で敬一が深く息を吸う。香奈子を確かめるように…。顎で香奈子の髪を避け、敬一の生暖かい舌先がピアスに触れる。太い指先が迷うことなく香奈子の乳房を包み込む。吐息が小刻みに震え始める…。

「香奈子の…匂い…」
 耳元に滑り込んでくる敬一の声。背中に感じる熱い胸。鼓動が一つになってゆく。両腕に包まれた乳房。指先が、ゆっくりと中心へ進む。2本の人指し指が、上着越しに左右の乳首を探し当てる。乳房に押し込まれる乳首が、反発する様にその隆起を増してゆく。腰辺り…敬一もまた激しく隆起させた自身を香奈子に押し付けてくる。香奈子の手が、条件反射とばかりに敬一のそれに伸びる。腰を引く。逃げる。意地悪。
「まだ…だめだ…」
 敬一の声が香奈子の欲求に火をつける。たまらず身を返す。向き合い、目を見る間もなく、唇を重ねる。香奈子から…舌を入れる。

 互いのコートを落とす。互いの上着を剥ぐ。唇を重ね、舌を絡ませ、唾液を飲み、荒々しい吐息を漏らす。冷たい床。フローリング。崩れる様に香奈子が力を失う。敬一が背中を支えながらも、その身を重ねてくる。ベルトのバックルがカチカチと金属音を立てる。捲り上げられた香奈子の胸元に、硬くなった乳首が愛撫を求める。力まかせにストッキングがずり下げられる。乳首をふくんだ敬一の口元から、粘質な音が漏れる。唾液にまみれた乳輪がヌラヌラと敬一の顔を汚す。冷たい指先が香奈子の下腹部に触れる。膝元で止まったストッキングが足かせの様に、香奈子の自由を奪う。

 敬一の指先が下着を潜り、茂みを分け入る。
“欲しい…待っていたの…早く…”
 大きく足を開いて、敬一の指戯を受けたい。ふしだらな程に足を開いて。だのに、膝元のストッキングがそれを許さない。足を開けない。もどかしくて、苛立たしくて、香奈子の腰が不自然に揺れる。下着の中で冷たい指先が香奈子の中心部に差し込まれる。
「あぁぁ…ん」
 腰をくねらせながら、たまらず喘ぎ声が漏れる。“中”で曲げられた指先が香奈子の肉壁をむさぼる。泉。湧き水。香奈子の愛液が止まることなく溢れてくる。太く短い親指が、的確にクリトリスを捕らえる。
「お願いだか…ら…脱がせて…」

 一瞬、二人の体に冷たい空気が割り込む。身を離した敬一が、腰を折り、はやる気持ちを抑える少年の様に、ストッキングを足首から抜く。自由を取り戻した民。歓喜に湧く本能が、秘部の熱となって、両足の力を奪い去る。開かれた足に、下着が密着し、愛液の染みを広げる。上半身裸となった敬一が再び、戻ってくる。腕を回し、きつく香奈子は抱きすがる。触れる唇が…熱い。肌と肌。ぬくもり。高ぶる神経に、冷めた理性がもろくも打ち砕かれる。剥ぎとられるように、下半身を剥き出しにされ、香奈子の太股に敬一の短い髪があたる。限界まで伸ばされた舌先が、愛液を掬いとる…。


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