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『HIDDEN AFFAIR』
【学園物 官能小説】

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『HIDDEN AFFAIR』-1

ぱらぱらっ−。
棗(なつめ)は退屈そうに文芸誌のページをめくっている。とりたて興味を引く読物はないのだが。
−あーぁ、退屈…。
ちらっと壁時計を見ると、まだ4時。少なくともあと1時間はここにいなくてはならない。
しんと静まり返ったこの空間は、とある高校の図書室である。
図書室といっても、教室等ある校舎とは距離を隔てていて、図書館棟として独立している。赤い煉瓦(レンガ)で出来た2階建てのアンティークな趣のこの建物は決して不粋なものではないが、普段使う校舎とは離れているために、「客足」はそこまで繁くはない。
まして、今時の高校生といえば、熱心に通い詰める生徒は極僅かである。
棗は高校2年生。図書委員の一員である。
図書委員の主な業務は、昼休みと放課後に貸し出し・返却の受付等をすることである。この業務は各クラスから選出された2名の図書委員が1日交代のローテーションで行う。
いつもなら放課後の業務は30分ほどでよい。後は常勤の司書が行う。
しかし、今日に限っては司書が出張のため、かわりに棗が遅くまで残って「営業」することになった。
しかも一緒に組んでいる相棒は用事があるからと先に帰ってしまった。
図書委員の仕事はそこまで大変ではない。むしろラクではあるが、忙しく対応するでもなく、こう退屈だと面白味に欠ける。
場所が場所なだけに友達を呼んでおしゃべりするわけにもいかない。その辺は心得ている。
「お疲れさん」
声を掛けてきたのは、棗の彼氏の空哉だった。
クラスは違うが同級生だ。
「先に帰っててよかったんだよ」
「どーせ暇だし、いいじゃん」
カウンター越しにぼそぼそと話す。
「あれ?もう一人は?」
受付の、棗の隣の空いた椅子を見ながら。
「帰っちゃった。いんだけどね。忙しくないし」
「俺手伝おうか?」
「いいよ、別に。そんなのいらないよー」
「まあ、そういうなって」
ずかずかとカウンターに入り、棗の隣に腰掛けた。
「もう。静かにしててよ?」
「わかってますって」
にこにこと愛想よく返事した。
ずらりと並ぶ本棚の脇に閲覧用の机と椅子が並んでいる。そこを埋めているのは僅か二人だけ。
二階にも今日は閲覧客はいない。
とりあえず、今日の貸し出し状況の集計をしようと棗は引き出しからファイルを取り出した。
「結構ちゃんとやってるんだな」
「仕事だからね」
空哉は彼女のこういう真面目なところは嫌いではない。むしろ好感を持っている。
それは、少々ちゃらんぽらんな自分の気性と反するものに魅力を感じているからだろう。
同い年だが、お姉さんみたいにしっかりしようとしている棗はなんだか健気で逆に可愛い−。
「あ」
作業をしていた棗の右手からシャープペンが滑り落ちる。床に渇いた音がした。
「いいよ、俺が拾う」
空哉は回転式のキャスターつき椅子をずらして、自分の足元に落ちたペンを手にする。
そのとき、何気なく棗の脚が目に入った。
棗のスカート丈はそこまで短くはないが、紺色のプリーツスカートからは膝小僧が覗いている。
暗がりだが、その奥で白いふとももが息づいているのがわかる。
その光景の艶めかしさに空哉は思わずゴクリと息を飲んだ。
「空哉?」
棗の声にはっと我に帰る。
「あ、あぁ。はい」
「ありがと」
しゃがんだままシャーペンを渡した。
思わぬ情景に空哉の若い熱情が俄かに沸き上がる。
棗と性交はこれまで数回交わしている。が、いずれもそれは自分の部屋で行われたもので、このような…、所謂公共の場で熱い欲望をそこまで感じたことはなかった。
一度意識すると、股間にその自覚の証が見えてくる。
悲しいかな、座り直せないでいた。
「どうしたの?うずくまったまま。気分悪い?」
棗が心配そうに小声で声を掛ける。
その辺の男の心理は理解できてないようだ。
「いや…、少し。こうしてれば収まる」
椅子を下り、床に腰を付ける。
「そう?気分悪いなら先に帰ってていいからね」
と再び作業を始めた。空哉の目は棗の脚に注がれたままだ。


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