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安倍川貴菜子の日常
【コメディ 恋愛小説】

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安倍川貴菜子の日常(2)-1

貴菜子と幸一郎が話をしていた頃、神野護は使い魔であるトナカイのエドを連れ街の本屋へ向かうべく商店街を歩いていた。
エドは護のハーフコートのフードからひょこっと顔を出すと護に話しかけてきた。
「なあ、本屋に行ったらついでに藤崎美弥の写真集を買ってくれないかなぁ。俺、あの子タイプなんだよね。顔もいいけど特に胸が大きいのが俺好みでさ」
「却下!」
「うっわっ、ひでーーっ!!俺の数少ない娯楽を一言で切り捨てやがったよ。鬼!悪魔!人でなし!お前の身体にはホントに赤い血が流れてるのかぁ?それとも心にハーケンクロイツでも刻まれてるのか!」
「うるさい、耳元で騒ぐな。捻るぞ」
護はうっとおしそうな表情でエドの言葉を遮るとそのままスタスタと歩き、目的の本屋の店内に入っていく。
今日、護が本屋に来た目的はサンタの仕事に関係するものだった。
何故サンタの仕事と本屋が結びつくのかと言うと護の特殊能力に関係しているのである。
その特殊能力とは物を修復する能力である。しかし、この能力には条件があり、直す物に大事な思い入れがあるというのが条件であった。
この能力を使うには護のイメージの力も必要になる事があるので、護は暇な時には本屋に立ち寄り小物雑誌やインテリア雑誌、果てはアンティークの雑誌等の様々な本に目を通しているのだった。
本屋にしてみれば護の立ち読みは甚だ迷惑であったが、それと同時に月に一度大量に本を購入する護だったので本屋としては表立って文句は言えないのであった。
そして護は二時間くらい立ち読みをしてからレジで大量の本の注文をした。ちなみにエドが所望した藤崎美弥の写真集は注文の中に入っていなかったのは言うまでもない。
護は本屋を後にすると少し遅めの昼食を摂る為に近くのファーストフード店に足を運ぶのだったが、そんな護を見つけた少年が護の名前を叫びながら駆け寄ってきた。
「護さーーんっ!待ってくれー!!」
駆け寄ってくる少年に対し護は苦虫を噛み潰した表情になり、少年が傍に来るなり護は握り締めた拳で殴りつけたのだ。
「街中で人の名前を大声で叫ぶなっ!お前には恥って認識はなくとも俺にはあるんだからな」
「悪かったよ護さん。でも、いきなり殴るなんて酷いよ…」
護に殴られた頬を擦りながら少年はせつなそうな表情を見せ護に訴えた。
「お前が学習しないからだろバカ犬」
「僕は犬じゃない!狼だよっ。それから僕には秀人っていうちゃんとした名前があるんだからバカ犬なんて呼ばないでよ」
「いよう、狼少年。相変わらずのバカ犬っぷりを晒してるじゃないか」
エドは護の肩に乗っかり秀人をからかう様な発言をすると、秀人は心外だと叫びながらエドを唸りながら睨みつけるのだった。
この秀人という少年。年齢は護より一つ年下であるが背が低く見た目は幼い割に小生意気そうに見えるが人懐っこい性格なのだった。そして護と同様に人に言えない秘密を持っていた。
彼の秘密とは秀人自身の体質の事であって、秀人はこの体質にコンプレックスを抱いていたのである。
そのコンプレックスの原因は狼男の血統であった。秀人の両親は普通の人間だったのだが、秀人は遠い祖先の血が極薄くではあるが隔世遺伝したらしく生まれながらにして狼男になってしまったのだった。
秀人の場合、狼男といってもその血の力は薄い為か変体して凶暴化したり人を襲う事等は皆無なのだが、それでもお約束というべきか月齢15日には尋常でない身体能力を発揮するが秀人はその能力が嫌いだった。
そして、偶然が重なり合って護と秀人は人に言えない秘密を持つ者同士という事が分かりこうして話すようになっていた。
「護さんが本屋の近くにいるって事は仕事の件?」
秀人は大きな瞳をキラキラさせて興味津々といった愛らしい表情で護を見つめるのだった。護はそんな秀人を見てホントこいつって犬だよなと思いながら苦笑しつつ秀人の質問を肯定した。


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