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ドッペルゲンガーの恋人/過去からの彼女(官能オカルト連作短編)
【幼馴染 官能小説】

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幽霊の義妹はご機嫌斜め(後日談)-2

3
「この列車、なんて言うかご存知ですか?」

「え? たしかオルペウス号とか」

「いいえ。似てますけど、この電車は兄弟分の「ネメシス号」です」

 頭を左右に振るアヤはどこからともなく取り出した、キラキラ光る手錠で、素早くサエの両手を拘束する。
 その顔は邪悪かつ淫靡に輝くようだった。
「そこで私は、復讐の女神と化すわけですよ」
 左右に指を振るアヤは「甘いですね」とでも言いたげな様子だ。その髪はサラサラと揺れて、そんなときでも可憐で美しいのが小憎らしい。
 サエは急展開に着いていけず目を白黒させるが、メトロの幽霊(精霊?)となっている義妹の口からは、さらに恐るべきことが切り出される。

「私って、メトロの水母天使駅でホテル業務の管理してるんですけど、今回はサエさんのために、色々と準備してあるんですよ」

「準備?」

「ええ。木馬とか縄とか、蝋燭とか。拘束具のあるベッドや十字架もあります」

 笑顔のアヤが、急に天使から小悪魔に見えてきた。
 その禍々しい用途は推して知るべし、だ。

「どうやって遊ぶか、胸が弾みます。覚悟しやがってください、サエお義姉さま」

「え? あの、木馬とか、縄とか? それって、あれ?」

 つい零れた声と、不安と謎に顰められたサエの顔。
 アヤは強烈なスタンガンで、迷わず彼女をバチバチッと失神させる。

「義理の姉として認められる試練だと思って、潔く諦めやがってください」

 列車が止まるや、その両脚を持って引きずっていこうとする。まるで美しい毒蜘蛛が自分の巣に獲物を引っ張っていくような調子ですらあった。水母天使駅のホテル設備は彼女の担当する縄張りで、今日はじきじきのスペシャルコースを用意しているのである。
 出てきたサリーナが、流石にズルズル引きずる(パンツも丸見え)のは可哀想だと思ったのか、サエの手を持って二人がかりで運ぶのを手伝ってやる。
 ホテルの特設の一室に運び込まれ、ドアがパタンと閉まる。やがて防音のはずの廊下にまで微かに、女の懊悩の唸りと牝の叫びが響いてきた。


4
 元の世界に帰ったサエは、恋人のリクに事のあらましを告げた。
 その目を見たリクの膝が官能混じりの戦慄に笑う。

(サエが、レベルアップしてきた?)

 しかも「受け」だけでなく、「攻め」までも、だ。
 禍々しい模造男根の器具で、最後はアヤとお互いに壊れるほど犯しあったとかなんとか。
 それで「アヤちゃんの処女は私が貰った、男の愉悦がわかった」などと妖しげに瞳を輝かせて語り、続けて「リクにもしてあげよっか? 女の子の気持ちを教えてあげるよ」などと、狂気じみた真顔でサエは問いかけるのだった。
 哀れなリクは頭を激しく振って拒否したが、それでも「たとえ逃げても、いつかはやられる」ような予感がして、漠として震えあがってしまう(尻の辺りが恐怖にゾワッとして金玉が竦みあがる)。
 横から眺めるサエはニヤニヤしながら「怖がりだな〜、男の子って」などと呟き、仕舞いにはお腹を抱えてゲラゲラ笑い出してしまう。しかもその手をワサワサさせて「縛り方とかも、コツを教えてもらったよ」などと物騒なことを言っている。
 リクの記憶の中の妹アヤは可憐な少女だったが、天然気味な上にやたらと研究熱心なところがあった。聞けば、暇つぶしに本で面白半分に勉強したとかなんとかで、義理の姉への敬意を込めて実践したのだとか、なんとか。

(アヤ、お前は後で俺がサエからどういう目にあわされるか、考えなかったのか!)

 だが、あの妹の奇妙に執念深いような性格からして、計算づくな気がしなくもない。これはある意味では、アヤのことを忘れて年上女性のハルカと交際し、さらにはサエと(規定パターンの)深い恋仲になった兄への暗黙の復讐も兼ねているのだろう。

(もう観念するしかないか)

 リクは覚悟を固めた。鞭打たれるくらいは甘受しよう。
 もうじき日が沈む(しかも明日は休日)。
 きっと慄然たる夜になることだろう。


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