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青い薔薇
【SM 官能小説】

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青い薔薇-6

いつのまにか夜空に拡がった暗雲が窓の外の風景を暗い灰色に塗り込めている。
あの人の性器について、ぼくはもっと深く想いはじめている。ほんとうにぼくはあの人の性器を知っているのだろうか。これまで青い薔薇だと思い続けていた彼女の性器。それは薔薇の幾重にも重なり合った花びらの奥に潜み、ぼくはまだ見たことがない。けっしてぼくが覗くことも触れることもできない未知の花芯は、彼女の恋人だけが入れる禁断の場所なのだ。あの人は青い花びらを恋人のペニスにゆだね、ぼくのペニスは花びらに触れることなく棘のある茎で縛られる。

花芯の奥から滲み出す透明な蜜汁は青く染まり、肉襞をすべり落ちていく。それはぼくが弾くことのできないあの人だけのヴァイオリンのボウイング。透きとおるような音は青色に変幻し、置き去りにされたぼくを映し出した水晶体の奥に吸い込まれていく。奏でられる音とともに溶かし込まれる青い色…………水晶体はあの人の性器だった。たくさんの光が混じりあった花芯は万華鏡のように煌めき、やがて迷路の先の子宮は濃い青色のベールに包まれている。その子宮から聞こえてくるヴァイオリンの一筋の高い音がぼくのペニスを擦(こす)り上げていく。沈黙と禁欲を強いるその音だけがぼくの存在を増幅させていく。

重なり合うあの人と恋人の男の顔がぼくの前にたちはだかり、風にゆらぎ、ぼくを嘲笑っている。抱き合うふたり。混じりあうふたり。溶け合うふたり。それはぼくとあの人ではなく、《あの人の恋人》なのだ。胸を掻き毟りたくなる息苦しい嫉妬。置き去りにされ、どこまでも堕ちていくぼくの心は地の底に叩きつけられ、無残に砕け散る。そそり立った恋人の堅いものを含んだあの人の花芯は蕩けるように潤み、酔ったように放心し、肉襞の溝に甘ったるい滴を溜めていく。底のない肉洞がゆるやかに波打ち、あの人は恋人のものを奥へ奥へと導いていく。肉襞の向こう側に見えるあの人の花芯は青い薔薇に変幻し、置き去りにされたぼくへ無垢の自虐を強いる。あの人がぼくに求める、あの人のために捧げる、ぼくの自虐の旋律。ぼくはあの人が恋人に抱かれていることを想うことで、とても悦ばしく自分を虐げることができないといけない。それを罪深く残酷なあの人は求めているのだ。

あの人への深まる想いは、ますますぼくの心と体を痛めつける。自虐は、ぼくに禁欲と敬虔さと、そして去勢という永遠の、無為の射精を強いる。精液を放出することのない行き場を失った肉幹は彷徨(さまよ)い続け、やがて愛おしい薔薇の青さに染まった孤独の黎明を迎える。虚しく、物憂く、それなのにとても麗しい時間。ぼくの指はヴァイオリンの指板の上をさまよいながら、あの人から与えられる恩寵の旋律を奏でる。

ロッキングチェアで裸のまま、いつのまにかまどろんでしまったぼくは、雨が降っていることに気がつかなかった。ぼくの零れるような嗚咽と精液の滴る音だと思っていた音は雨の音だった。 
窓から遠くに見える水平線は、濃い霧のような雲に包まれている。部屋の中は何もかも完璧だと思っていたのに、目の前の窓台に置かれた花瓶の中の青い薔薇の何かが変化していた。花びらはいつもと違って麻痺的な青さに彩られている。ぼくの夢を塗りつぶしていた青さは何も変わってはいないのに、薔薇は不思議なことに、あまりに艶やかな淫らさを色づかせ、棘の先端に麗しく煌めく樹液を滲ませている。いつもは慎ましい花びらなのに、その花弁は、まるでぼくを嘲るあの人の乱れた恥部を感じさせた。ぼくが知らないあいだに熟れすぎたあの人の性器………あの人の肉の合わせ目から滲み出る甘酸っぱい汁は、ぼくたちの季節が過ぎ去ったことを示すように渇きかけている。

砂漠に吸い込まれ、深海に深く溶け、茫漠とした空に漂うぼくの精液をあの人が必要とすることはない。きっとそうだろうと思っている。いずれぼくはあの人に葬られる。あの人は、ぼくの肉体が含んでいる音の色彩をすべて残酷に奪いとっていくのだから。
ぼくは想った。処刑によってあの人に切り落とされたぼくのペニスを。無残なペニスから青い薔薇の花芯に向って放たれた精液。永遠に浄められるぼくの純潔。そして、ぼくとあの人の関係は悦ばしいイデアの世界へと昇華する。


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