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夏のこと
【少年/少女 恋愛小説】

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秋の手前-1

俺は今日大好きな梓と別れる。
2ヶ月前に梓から言われた。
「これからいっぱい愛し合って、夏の花火を見終わったら、もうさよならしよう」
って。
梓は笑顔だった。
でも、この笑顔が心からという訳では無いことを知っている。
分かっているよ、梓。俺たちは好きだという感情を貫き通せる程、大人なんかじゃない。
相手を惜しまず、すんなり別れることが出来る程、子供じゃない。
そんな俺たちがいつか来る別れのために、
今をおもいっきり楽しむという選択は
最高の道だと思った。
でも、流石に別れを考えることは辛かった。
他に道はないのか。
例えば、本当に別れる日まで付き合ってみるとか。
梓の気持ちが分かっているのに、未練がましいな。

梓は自分の夢を語るとき、キラキラしていた。
「あたし、子供と英語が好きでしょ。だから絶対、外国で子供のための日本語教師になりたいの」
外国か。そのとき俺は側にいないと気付いて、胸の奥が痛んだ。
梓が夢を叶えるその頃には俺の側に誰かいてくれるかな。


梓とのそれからの毎日は楽しかった。前より愛おしくなったし、梓との今は居心地が良かった。
俺は出来るだけ笑顔を絶やさないようにし、梓を愛した。
梓の目に俺はどう写っているかな。
ふと俺を思い出してくれたとき、笑顔だといいな。

そんなことを考えながら、待ち合わせ場所に着いた。
梓は今日も離したくない程、愛おしいだろう。

梓に電話をかける。
『もしもし、梓?準備出来たらおいで。いつもの待ち合わせ場所にいるから』
地面を見つめながら梓を待つ。
梓のことは忘れないだろう。記憶が例え薄れても、
梓の事だけは。


愛し合っているという感覚は確実にあるのに別れる俺たち。
明日からも俺は梓を思う。
でも、俺たちはもう別々だ。
確実にくる未来のために、別れるんだ。
明るくいくよ。
例え、未来に君と一緒じゃなくても。


じゃあな、梓。


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