光の風 〈聖地篇〉-9
「何で…。」
カルサの驚いた声にリュナは微笑んだ。優しく温かい空気に包まれる。
「私のこと、何も知らないって思ってるでしょ。」
その質問にカルサは何も答えられなかった。リュナは微笑み、カルサの手を取る。
「行きましょ！」
リュナに手を引かれ二人は会場に向かった。宮殿内の大広間、たくさんの食事と御剣たちが集まっている。
守麗王の声で乾杯を行ない、みな自由に話を始めた。無数の世界に散らばる御剣、こうして集まるのはそんなにはない。
御剣は象徴として扱われる者、戦士として闘う者、人知れず暮らす者、正体を隠し普通に生きる者、様々なスタイルを取っている。しかし大多数の者が命を狙われていた。強大な力をもつ為か、そんな生活を抜け出し総本山に住む者もいる。
御剣たちがいつでも帰れるように、居場所を与える意味での総本山でもあった。
リュナに話しかける者、カルサに話しかける者、二人は同じ場所に居ながらも会話をするのは困難だった。
やがて沙更陣がカルサに近寄ってきた。手にはグラスを二つ。
「カルサ。さっき、庭に行ったのか？」
グラスを差出しながら問いかける。カルサはそれを受け取り、ああ、と頷いた。
ふと辺りを見回してみる。守麗王の横にはジンロが位置していた。どちらか一人が必ず護衛につく。御剣の当主は常に命を狙われていてもおかしくはないのだ。
「今はジンロがついているよ。」
カルサは顔を背け、沙更陣に向ける。相変わらず優しいほほ笑みを絶やさない沙更陣、その顔を前にしてもカルサは無表情だった。
「ジンロの方が良かったかな？私は彼女…ロワーヌの…。」
「何をおっしゃるんですか。沙更陣様と話せるだけで私は光栄です。」
カルサは笑顔で沙更陣の言葉を遮った。さっきまでとは違う、完全に外向けの笑顔。思わず沙更陣も苦笑いしてしまう。
「きみに会えて嬉しかったよ、どうか楽しんでいってくれ。」
寂しげな瞳で沙更陣は去っていった。最後の言葉を発する前の微妙な表情。
「カルサ！」
「千羅。」
カルサの背後で地神・千羅が睨みをきかせていた事が理由らしい。千羅はカルサを会場に面した広いバルコニーに連れ出した。
意外にも誰もいない。
「さっきリュナに凄い事言われたよ。」
バルコニーの手摺りに体を預けカルサは笑った。千羅は横に行きカルサを覗き込み。