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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈聖地篇〉-8

「そういう事か…。」

消えそうな声で絞りだすようにカルサは呟いた。ただ千羅は見つめることしかできない。

まさか。そんな言葉が頭の中を何度もよぎる。やがて後ろから、ゆっくりと歩いてきたジンロが呟いた。

その石版の主、それは…

「最高神官ウレイ…。」

静かな時が流れる。しばらくは誰も動かなかった。それぞれに思うところがあり、その思いに囲まれてしまった。

風が吹き抜ける。カルサの手は石版に置かれたまま、離れることはなかった。





 宮殿ではさっきまでとは違い、人が集まっていた。賑やかな雰囲気、風神と雷神を迎えいれる為にたまたま訪れていた御剣や、わざわざ集まった御剣もいた。

カルサは一人、部屋で椅子に座って窓の外を眺めていた。目に映る景色なんて何でも良かった。

自分の意識の中に自分を閉じ込める。無気力、そんな言葉が今のカルサには合うのかもしれない。

やがてそんなカルサを引き戻すかのように、ドアのノック音が聞こえた。気配で分かる、リュナだ。

「はい。どうぞ。」

声をいつもの様に戻し、招き入れた。何でもないフリ、そんなのはいつもの事だった。

「カルサ、守麗王様が歓迎のセレモニーを開いてくださるんですって。」

そう言いながらドアを開け中に入ってくる。いつもと変わらない光景、しかし今のカルサには少し懐かしささえ感じた。

カルサは椅子に座ったまま、左手をさしのべてリュナを誘導する。リュナも当たり前のように、その手に巻き込まれていった。

カルサは強くリュナを抱きよせ、自分の顔が見えなくなるように彼女のお腹辺りに顔を埋めた。

「カルサ!?」

急な出来事に顔を赤くして慌てた。しかしそれは一瞬の事、すぐにリュナはカルサの頭をなではじめた。

様子がおかしい。そんな事は分かっている。総本山に来てからどこかおかしかった。

「カルサ?」

ゆっくりと頭を撫でながら声をかける。しかしカルサは応えず、リュナを抱きしめていた。

目をつむりリュナの体温と鼓動を感じる。何もかも忘れられる、そんな瞬間を求めているのかもしれない。

愛しさと切なさが込み上げてくる。リュナは屈み、カルサの背中にキスをした。

カルサはゆっくりと顔をあげ、体を起こした。不思議そうな目、少し無気力。リュナはカルサの頬に手をあて、目を見つめた。

「シードゥルサが心配?」

カルサは目を見開いた。心配そうなリュナの顔が目の前にある。


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