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君の手〜side優〜
【失恋 恋愛小説】

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君の手〜side優〜-1

君の手は俺より遥かに小さく柔らかい。そして暖かかった…
離したくない。本当に離したくなんかなかったんだよ。


ナナからメールが着た。
【明日、桜が見たい(^^)上野公園満開らしいよ〜】
きっと明日で最後なのだろう。ふとそう思った3月の終わり、東京は桜が満開の季節になっていた。

俺よりひとつ年上のナナと出会ったのは去年の9月。友達の紹介だった。最初の印象は俺より小さい、年下なんじゃないか、位でしかなかった。
その日からなんとなく俺達はメールをし始めた。
そして当然の流れと言わんばかりに二人で遊ぶことになった。初めて二人だけで遊んだ時はまだ、ぎこちなかった。
とりあえず見たい映画があったので提案した。映画は思っていたより泣ける話で泣きそうになった俺は慌ててあくびをする振りをして隣をみた。
「号泣かよ(笑)」
思わず声に出た。ナナは俺をチラッと見ると、悪い?と言ってまた前を見た。
なぜか分からないがツボに入った為、笑いを押さえるのに必死でその後のストーリーは頭に入らなかった。
それから何度か二人で遊んだ。いつからかは定かではないがナナに魅れていた。楽しいと素直に笑い、怒るとすぐに顔に出る。酔うと絶対転び、転ぶと泣く。面白かった。目が離せない手のかかる年上はいつのまにか大事な人になっていた。
二人で海に行った日、初めて手を繋いだ。こんな小さな手なのに暖かく俺の手を包んだ。
その日から俺達は付き合い始めた。
毎日が楽しかった。俺は学校、ナナは仕事があるから会える日は多くはなかったが毎日のメールのやり取りだけで俺は笑顔になれた。

けれど…俺は卒業したらアメリカに2年留学する事が決まっていた。

時が過ぎるのは早すぎて苦しかった。二人でいるとき、たまにナナの瞳に寂しさが映るからだ。でも、ナナは行くなとも寂しいとも口には出さなかった。
そんな時の俺は何も言えずただナナの小さな手を握り締めることしか出来なかった。
ナナが悲しむ前にその手を離す勇気も持てず、俺はまだまだガキでどうする事も出来なかったんだ…本当だったらナナを連れていきたかった。ずっと側に…でもそんな俺をナナは好きでいてはくれない気がした。

それからは、あっという間に時間が経った。
ナナはよく笑った。寂しさを出すまいと。
気付けば3月も終わる。互いに気持ちがあるのに、なぜだか二人は手を離す道を選んだ気がした。そんな時のナナからのメール。
【明日、桜が見たい(^^)上野公園満開らしいよ〜】
俺は返事を打った。
【ナナが花見たいなんて珍しい(笑)いいよ。明日行こう(^^)】
きっとこれが最後だろうから。
その日の夜は寝つけなかった。いつも隣にいるはずの人が明日にはいなくなる。言い表せない不安と寂しさが交互に襲ってきた。
けれどもう戻れない。戻らないと決めたから。


桜は満開でとても綺麗だった。
ナナはいつものように笑っていた。俺もつられて笑顔になるが会話は少なかったそして手は繋がなかった。
しばらくして腹が減ったので二人の行き付けの居酒屋へ向かった。いつもの雰囲気で飲んでいたが、フッと会話が途切れた。
「今日で終わりな気がする」
ナナは微笑みながら言ったが俺には痛々しく、愛おしく感じてナナの頭を撫でた。
俺は涙を抑える自信がなくなりトイレへ立った。


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