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僕と彼女の理由
【片思い 恋愛小説】

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僕と彼女の理由-2

僕だって健全な高校2年の男子なわけで、少しは彼女も意識してくれて構わないのに、彼女は全く気にしてないようだった。
今日もノースリーブのシャツに短パンを履いてやって来た。
生足が惜し気なく露出されている。
最近では僕ばかりドギマギするのもばかみたいなので、あえてそういうのは見ないことにしている。
その足をぷらぷらさせながら彼女はまだ「先輩」のこととか「先輩☆」のことや「先輩♪」のことを話している。
彼女は「先輩」の話をするときが一番輝いている。
「ねえ、話聞いてる?」
気付いたら、雑誌の『近場のオススメデートスポット30!!』を思いの他熱心に見て、相槌を打っていなかった。
ここは青森でお台場や渋谷なんて全然近場じゃないけど。
いっしょに行く彼女もいないし。
「ねえ、キヨシってさ、好きな娘とかいないの?」
「ん?」
急に彼女が話題を変えた。
「彼女がいないのは知ってるけど」
ん?
「好きな娘くらいいないの?」
とてもかわいい、僕の好きな笑顔で聞いてくる。
でもそんなの言えるわけない。
きっと言ったら彼女はこの部屋に来なくなってしまう。
「いないよ。今のところは」
やっぱり彼女は気付いていない。
「そうなの?もし好きな娘ができたらわたしが相談に乗ってあげるよ。こう見えてそういうのは得意だから」
ほんとかな?
「んと、それで来週告白しようと思うの。どうかな?」
「先輩」に彼女は告白する。
「うん。いいと思う。がんばって」
それに僕は笑って賛成する。
「うん。がんばる」
かわいい顔で彼女が微笑む。これでいい。


そして今日が3日後。彼女の決意の日。
彼女と僕は美術部だ。
今日は美術部は休みの日。
「先輩」は美術部部長で、彼女はだからこの日を選んだ。
今頃、きっと彼女は人目につかない学校の中庭で、「先輩」に二年間の想いを告げているだろう。
僕はこっそり作った合いカギを使って美術室にはいる。
いつも使っている窓側の一番後ろの席に座る。
彼女がいつも前に座っていて、その前の席には「先輩」がいて。
創作の途中で「先輩」の背中を時折盗み見る彼女の背中を、僕は盗み見ることはせず、むしろ頬杖をついて、創作なんてそっちのけで、堂々と見つめていた。
ああ、ほんとにストーカーみたいだな。苦笑いしか出てこない。
なんで恋ってやつぁ、こんなに難しいんだろう。
彼女の2つの目が「先輩」ではなく、僕を追いかけるようになれば、彼女が「先輩」ではなくうっかりでも僕を好きになってくれれば。
僕は彼女をいつも目で追っていて、彼女のことが好きだから。僕は救われるのに。あーあ、やってらんねーな。頬杖をついて窓の外を見る。サッカー部が校庭で部活に励んでいる。彼女は大丈夫かな?


いつのまにか寝ていたみたいで、気付いたらビニールのがさがさいう音で目が覚めた。
焦点の合わない目でぼんやり瞬きすると、見慣れた彼女の背中があった。
あれ?
「なんでいるの?」
これは彼女のセリフ。僕もそれを聞きたかったんだけど。
「え?あー・・・ちょっと・・・」
まだぼんやりした頭で理由を探す。
探さなくてもわかっているけど、彼女には言えない。
「先輩にふられた」
彼女が後ろ姿のまま言った。
「あー・・・」
僕がここにいた理由。
彼女はきっとふられたらここに来るだろうから。


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