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僕と彼女の理由
【片思い 恋愛小説】

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僕と彼女の理由-1

彼女が僕に聞く。
「どうしてなんだろうね」
そんなのこっちが聞きたいよ。

あ、走ってる。
教室の一番後ろ、とても寝心地がいいその場所から僕は校庭を眺めている。
「このaがこっちに移項して・・・」
僕は数学が苦手だ。
数学の先生には悪いけど、因数分解の説明は授業開始10分で右から左に聞き流すことに決めて。
僕は校庭の彼女をまるでストーカー、あるいはスナイパーのように目で追っている。
さっきまで校庭ではやる気のない女子高生がジャージ姿であちこちに点在していたけど、今は校庭をぐるぐる走っている。
相変わらずやる気はないみたいだけど。
彼女は一人きりで多分一番前を走っている。
もしかしてすごく足が遅くてびりっけつなのかもしれない。いや、きっとそんなことはないだろう。
彼女はとてもきれいなフォームで走っている。
規則正しく、肩の上で少し癖っ毛の髪が飛び跳ねている。
見るからに足は速そうだ。それよりも僕は彼女が長距離が得意なことを知っている。
随分前から、それこそ生まれたときから、僕と彼女はお隣さん同士だから大抵のことは知っている。
彼女の足の動きはほれぼれしてしまう。
例えるならまるでチーターのよう・・・。
いや、やっぱりカモシカかな?
そして彼女が今日一大決心をしたことも僕は知っている。
なぜか?答えは簡単。
彼女がその決意に至るまで僕に相談してきたからだ。
相談というより、一方的に話してる感じだったけど。
彼女は真剣な表情で黙々と走っている。
きっと放課後に会う約束をした「先輩」とやらのことを考えているのだろう。
だらだらと最後尾を走っていた女子の集団をさらりと抜かした。
僕は一応相談をされた身で、彼女が今日「先輩」を呼び出す決心をしたことにも賛成したわけだけど、彼女の決意が実を結ぶことを素直に喜べないでいる。
なぜか?答えは火を見るより明らかだ。
彼女は今日二年間想いを寄せてきた「先輩」に告白するからで、失敗したとき彼女の傷つく顔を見たくないから。
そして成功しても彼女の喜ぶ顔を見るのは複雑だ。
それは僕が彼女のことを好きだから。
彼女いま3周目を走ってもうすぐゴールしようとしている。
どんどん2周目を走っているクラスメートを抜かしていく。
あともう少し。あと数メートル。ラストスパート。お、ゴ〜ル!
「おい中村、なによそ見してんだ」
あ、怒られた。


「先輩はね、今彼女がいないらしいの。今は4月で、3年生はもう少ししたら、受験で忙しくなるし。告白するとしたら今しかないと思うんだ」
これは3日前の話。
「うん。そうだね」
「つい何ヵ月か前まで・・去年の12月までかな?ちがうクラスに彼女がいたんだって。知ってるでしょ?今はフリーで彼女募集中だと思うの」
そして今日は日曜日。
「うん。きっとそうだね」
「受験のときとか支えてあげたいんだ。先輩は強い人だけど、弱いとこもあると思うし。そういうときにわたしが!ね、そう思うでしょ?」
ちなみにここは僕の部屋。
「うん。そう思う」
彼女は僕の部屋の僕のベットに寝そべって、お菓子を食べながら熱心に話している。
僕も彼女といっしょにベットに寝そべりたいところだけど、そうもいかないので床に座って雑誌をみながら、彼女の話を聞いている。
彼女と僕の家は徒歩30秒くらいの距離で、彼女はよく僕の部屋に来る。


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