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玉子焼き
【純愛 恋愛小説】

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玉子焼き-2

手紙を読み終えた時には、自分の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。だって信じられないよ。あの元気で活発な此華が…病気だなんて。

「俺は変わった。」
自分に言い聞かせ、朝方のキッチンに向かう。

それから来る日も来る日も、玉子焼きを作り続けた。自分の食費を削り。ぶっちゃけ俺のほうが生命的にヤバイんじゃないのか?とか思いつつ作った。体調を崩し、頭がガンガンいってても、玉子焼きを作り続けた。ただ、ひたすら。此華のために。一年間、一日も休まず作り続けた。


そして運命の日。此華が居なくなり、宿題を任された日。
今日も玉子焼きを作りまくる俺。今日、38個目のタマゴを割った時。

ピンポーン…
俺は無言でドアを開けた。
「ただいま。」
「こ…のかッッ!!」
この一年間、押さえ続けていたものがドッと溢れた。
「あーあー、泣くんじゃないわよ〜。私よ。生きてるわよ。」
「う…ッッ、生きててよかった!」
「滄に教えてないことがいっぱいあるでしょう。死に切れないわ!!」
「っく…はは、はははは…さすが此華だぁ。」
「いきなり笑わないでよ!恐いわよ!」
「ごめんッッ!」
ホントに、ホントに嬉しい。笑いたくもなるさ。

「…で、いつまでも胸に引っ付かないで。ハートならちゃんとあるわよ。」
気が付けば俺はずっと此華に抱き着いていた。普通逆だよな…。

「じゃぁ宿題を提出して下さい!滄クン♪」
「分かりましたッッ!」

そう言って、自信を持ってキッチンへ向かう。俺ならできる。一年間やったんだ。

タマゴを溶き、調味料を少々加える。それを熱したフライパンに流し込む。すぐさま掻き交ぜ、半熟のトロトロにする。次に手首のスナップを効かせ、くるっと巻き込む。
「よし!出来たぁ。」
「出来たよ〜。」
テーブルに腰掛けていた此華に渡す。
「おぉ?マジで上手になったねぇ。見た目超キレイ〜。」
「おあがりなさい♪」
「いっただっきまーす!」
と言うと、此華は玉子焼きに醤油を少量かけて、口に運んだ。超期待。
「はむ…。ん…?うぅ!?」
「どーした此華ぁ?」
「ほふぁえ…はひひはんはふぉ!(お前…何したんだよ!)」
「え…えぇ!?」
突然の出来事に驚く俺。
「んぐ、はぁ…結論から言わせてもらおう滄君!」
「は、はいッ」
眉間にシワを寄せたまま、此華は微動だにしない。超ドキドキ…。
「まずい。超まじぃ。さすが滄だわ。あたしじゃ出来ないよ。」

……。さらりと言いやがった!人が一年かけて作った結晶を!


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