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【学園物 恋愛小説】

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想[3]-1

あーあ…早く暁寿来ないかなぁ。暇だよ…。
今日の天気は快晴。雨が降らない限り、暁寿は私を家まで送ってくれていた。昨日みたく自転車でわざわざ学校まで迎えにきてくれる。
さすがに悪いと思って初めは断っていたよ。だけど、「オレがしたいからすんだよ」って言うんだもん。ちゃっかり甘えさせてもらってます…。なのに、今日は遅い。もう、6時だよ?さっきから軽く1時間は待っている。
「早く来ないかな…」
私は空を見上げた。夏は今の時間帯でも明るかったのに、空はもう藍色に染まっている。
秋なんだ…。
私は大きく息を吸い込んだ。秋の香りがする。どういう香りかと問われれば、うまく答えられないけど…四季それぞれに香りがあって、四季の変化を私は嗅覚で感じ取っていた。この間まで夏の香りだったのに…。
私の視界の片隅に誰か入ってきた。どうやら少し離れて立っているらしい…。その人に気付かれないよう、私は目だけを動かした。
―げっ!名屋君!?
私は妙に緊張して固まってしまった。普段はキャーキャー言ってるくせに、こういうシチュエーションになると今すぐここから消えたくなる。穴があったら入りたい…出来れば地中深くまで潜りたい。
そんなことを悟られてはならないので私は平然を装おうと努力する。傍ら、横目で名屋君の様子を伺う。
当の本人は空を見上げたまま動かない。何やってんだろう?
「ねぇ」
いきなり名屋君は口を開いた。
「何かあんの」
こ…れは…私に話しかけてるの…かな?
「私に聞いてるの?」
「あんた以外誰いんだよ」
名屋君は呆れたように私を見るとすぐに空へと視線を戻した。
「そうだよね…」
「でさぁ、何かあんの」
「え?あ…何かって…何が?」
「空に」
「空に…?空には…何もないよ」
期待はずれ。名屋君はそんな顔をしてうなだれた。
「なんだ…おもしろいものでもあるのかと思った」
「おもしろいもの?」
すると名屋君は私を指差した。
「主里が空ばっか見てるから、気になって」
「そんなに見てた?」
「うん」
「…暗くなるの早くなったなぁと思って」
「うん」
また私は空を見上げた。それにつられて名屋君も同じように見上げた。
そして、私は名屋君と会話したことに感動し、今までのやり取りをずっと頭の中でリピートしていた。そんで、気付いた!
「私の名前!」
さっき名屋君は私のこと「主里」って…!!
「どうして!?」
「ん…どうしてって…」
名屋君は見上げたまま言った。
「一回聞いたら忘れらんない名前。珍しいから」
「そう…か」
お父さん、あなたには感謝します。あなたの沖縄好きがたたって名付けられたこの私。何度「首里城」とからかわれたことか…。あなたに泣き付いても「里の主になるようにって意味だよ〜。ビッグになりなさぁい!」って巧い感じに誤魔化されたよね?だけど今、この名前が好きになれそうです!!ビバ首里城、ビバ沖縄、ビバお父さん!
私は小さくガッツポーズを決めた。
「昨日のって彼氏?」
はっとして振り向くと名屋君は私の方に体を向けて立っていた。
「あ…うん、もうすぐ2年になる」
「ふーん」
名屋君は興味なさそうに相槌を打った。
「俺、帰るわ」
「あ…う、うん。さようなら…」
唐突にそう言うと名屋君は片手を上げて玄関の階段をけだるそうに下りていき、校門を出るとそのまま左に曲がっていってしまった。
はぁ…死ぬかと思った。私は心臓に手を当ててみる。ドッドッドッドッと忙しなく動いていた。呼吸も上手く出来ない。高校受験より緊張した…。
今になって後悔の念が強まってくる。もっと色んなこと聞いとけば良かった!もう、一生話すことなんて無いかもしれないのにーっ!!
名屋君、今まで何してたんだろ。何で話し掛けてきたんだろ。うーん、気になる…。


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