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天神様は恋も占う?
【青春 恋愛小説】

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清爽なキッス-2

「いいじゃない。もしかしたら出してもらえるかも知れないよ。いつも練習がんばっているんでしょ?」
 そう言っても純一の表情は晴れないまま。やはり対戦相手が強いためか、少し弱気なのかもしれなかった。
「まあ、頑張ってはいるつもりだけど……」
「でしょ? 大丈夫だって! それとも……?」
 純一の正面に回って目を合わせる。
「私に、応援に来てもらいたくないとでも?」
「う、い、いや、そんなことはないよ」
 梓が“小悪魔的な”表情をすると、純一は冷や汗を辺りに飛ばさん勢いで首を横にシェイクした。──別にそこまで慌てなくてもいいと思うのだけど。
「じゃあ決まりね! 絶対応援に行ってあげるからね!」
 満面の笑みで純一を見ると、純一もほんのり笑みを浮かべた。

 ──ホントは純一のユニフォームを着て野球をする姿が見たい、という自身の恣意的欲求に基づいた提案だった、ということは、純一には口が裂けても言えないことだ。
 いよいよ5月4日、試合当日の朝になった。
別に梓自身が試合に出場するわけではないはずなのに、妙に緊張している自分が少し笑えてくる。だけれど、純一が野球をする姿を見るのは小学校の時の少年団での試合以来になるので、同時にほんのり胸がときめいているわけで。
そのためか、今朝目が覚めたのは5時半。階下に行くと家族みんな寝ていたし、母親である菅原絵美には『今日は何か降ってきそうね、槍とか』なんて言われるし。更に父親の大介が起きてからは、二人から『お熱いこと!』と、バカにしたような目で見られる。純一の話になると直ぐに首を突っ込みたがるのだから、本当に困ったものだ。
でも、全ては純一の……、だけじゃなく月雁野球部の応援のため。練習試合といえども、しっかり応援してあげなくてはならない。でも一人の応援は心細いものなので。
「――もしもし、準備できた?」
『できてるよー! 心配しないでよ!』
「そういえば、初めてだったっけ? 真奈、隼斗くんの試合見るのって」
電話の相手は伊藤真奈。幼稚園の時からの付き合いで、所謂幼なじみ。梓と純一が幼稚園に入る前からの仲であるのだが、同様に隼斗と真奈も幼稚園前から仲が良かったらしい。
『そうなのよね〜、なんか用事が重なったり風邪ひいちゃったりして』
そうなのだ。小学生の頃、純一と隼斗が少年団の大会に出た時、真奈は運の悪いことに38度の熱を出して寝込んでいた。その大会はトーナメント形式で、純一たちのチーム(確かファイターズって言ったはず)は見事に優勝したのもあり、真奈は大分残念がっていた。
「今日は大丈夫なの?」
『バッチリよ! ぐっすり寝たし』
声も元気が溢れているようにきこえたことからも、今回は大丈夫そうだ。

その後待ち合わせ場所と時間を話し、通話を切った。

「ふう……」
“あの事件”以来野球の時は『面倒だ〜』と言う隼斗。電話をする前までは、今日も同じことを言うのだろうと思っていた。多分俺は心の中でそれを決め付けていた観があった。
だけど。それは違った。
『やる気をだせ!』と言っても毎度毎度無反応を決め込む隼斗が、今日は、
『分かってるって! 今日は頑張ってやるから』
と、大声で返してきた。
いつもよりはコメントが多かったことからも、珍しくいつもは見せないやる気を見せたようだった。平時のような、だるそうな感じでもなかったし。一体何が隼斗をやる気にさせたのだろうか――。
とにかく、隼斗が本気を出した時の仲間たちの驚きに満ちるであろうその表情を想像して、一人ほくそ笑む純一であった。――ここが自分の部屋とはいえ、一人ニヤつくのは若干気色が悪いのだが。


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