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ある女教師の受難
【教師 官能小説】

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紳士的な男-2

「本当にすみません、実咲って昔からあんな感じで。いい子なんですけど……」
「いや、気にしてませんよ。楽しいお友達じゃないですか。それにしても本当に奇遇ですね」
「本当ですね。高岡さんはお仕事帰りだったんですか?」
「取引先との会食の帰りです。まあ仕事の一環ですね」
 浮かれた人々が行き交う繁華街を、他愛もない話をしながらゆっくりと歩く。酔っているユリに高岡が歩調を合わせてくれているのだろう。時折夜風が心地よくユリの頬を撫でていく。
 それにしても、一向に駐車場に着く様子がない。それどころか徐々に歓楽街の奥へと進んでいるように思える。気付けば周囲は妖しげなネオンばかりだ。
「あの……駐車場って、このあたりなんですか……?」
 思わず尋ねると、高岡は微笑みながら言う。
「ええ、もう少し先です。すみません、こんなに歩かせてしまって」
「いえ、こちらこそおかしなことを聞いてしまって……」
 なんとなく気まずくなり、会話が途切れる。黙って歩くうちに減っていく飲食店や風俗店のネオン。代わりに、今や四方八方に奇抜な外観のラブホテルが林立していた。

「高岡さん、私やっぱりタクシーで……」
 そう言いかけた時、高岡の腕がユリの腰にサラリと回された。微笑みを浮かべたまま、高岡はユリの耳元に囁く。
「あの日のこと、今からでも大事にしますか?」
 紳士然とした態度を崩さぬままの高岡だが、ユリは驚きを隠せない。
「えっ……? どういうことですか……?!」
 反射的に逃れようとするが、がっしりとした腕に抱き寄せられてふらつき、ユリは意に反して高岡の腕の中に収まってしまう。
「実を言うと診断書も取ってあるんです。いざという時のためにね」
 高岡の意図を察し、ユリの表情が強張っていく。さっきまでふわふわとしていたユリの脳裏に、黒谷との忌まわしい記憶が瞬時に蘇る。
「偶然あなたに会えるとは、今日はツイてるなぁ」
 抱き寄せられたまま、ユリは高岡の顔を見上げた。高岡は微笑みながらユリを見下ろしている。きっと道行く人には、ホテルの部屋まで待ちきれない男女のように見えているに違いない。だが、高岡の目の奥は笑っていないようにユリには思えた。
 ユリは自分の甘さを思い知り、後悔の念に押し潰されそうになる。いくら酔っているからといって、いくら紳士的だからといって、のこのことついて来てはいけなかったのだ。教師と保護者という立場で出会い寛大な対応を見せられたことで、ユリは警戒心をすっかり失っていた。
「さあ、その辺で少し休みましょう、ユリ先生。気分がすぐれないようだ」
 高岡は一見優しげに、しかし強い力でユリの腰を抱き直すと、目の前にそびえ立つ悪趣味なホテルへと歩を進める。ユリはすっかり重くなった足取りで、まるで待ち構えているかのようなその入り口に飲み込まれて行く。拒む余地など残されていなかった。

*****

 部屋へ入ると高岡はすぐさまジャケットを脱ぎ、ソファーに投げ捨てた。
「息子に感謝しなきゃいけないなぁ。それに、先生のお友達にも」
 高級ブランドの腕時計を外しながら、ドアの前で立ち竦むユリを振り返る。なぜこんなことになってしまったのだろうと、ユリは自分の浅はかさを悔いるばかりだった。
「さあ、こっちですよユリ先生」
 高岡に手を引かれ、ユリは室内へと導かれる。品のない外観の割には小奇麗で落ち着いた雰囲気の部屋だったが、怪しげな商品が詰まった小さな自動販売機や部屋の中央を陣取る大きなベッドからは、隠しきれない淫猥な空気が滲み出ている。
「ま、待って下さい……やっぱり私……」
 ユリをベッドの縁に座らせると、Yシャツを脱ぎながら高岡が言う。
「あなたのような若い女性の将来に傷を付けるのは、私の本意ではありません」
 どこかで聞いたような白々しい台詞。紳士の仮面を被っているだけで、高岡の本性は黒谷とさして変わらないのだ。
「出会った日からずっと考えていたんですよ。あなたを私の好きにしてみたい、とね」
 縮こまるユリの隣に高岡は腰を下ろす。見つめるその目の奥はやはり少しも笑っていない。
「まだ顔が赤いですね……とても可愛らしい」
 逞しい右腕に肩を抱き寄せられて、ユリは一層体を硬直させる。そんなユリの顔、そして体を高岡は観察するように眺めている。
「自分で脱ぎますか? それとも私に脱がせて欲しいですか?」
 ユリの髪を撫でながら高岡が言う。どちらにしろ屈辱的だが、黙って脱がされるくらいなら自分で脱ぐ方がいくらかマシだ。
「自分で脱ぎます……」
 迷いながらも、ユリはカーディガンをそっと脱いで床に落とす。華奢なキャミソールの肩紐、剥き出しの二の腕が心許ない。高岡はゆっくりとユリの髪を撫で続けながら、そのぎこちないストリップショーを楽しんでいるようだった。


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