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月が闇を照らす時
【コメディ その他小説】

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罪の痛みと引き替えに-1

〜広樹目線〜
目を開ける。
見知らぬ天井が見える。
周りに目をやる、病院であることがわかる。
ベッドの傍らには二人の少女が見えた。
一人は寝ているようだが一人とは目があった。
「気がついたか?」
凪は木刀を抱くように腕組みをしていた。
「ああ、大丈夫だ」
上体を起こす。
「緑がかなり心配していたぞ。医者から軽傷ですぐに目を覚ますと言われたのに信用せんしな」
緑らしい反応だと思った。
「だが、オーラの使いすぎで疲れたのだろう。 すぐに寝てしまった」
「そうか」
「さっきまで皐月もおったが、先に帰らせた」
よけいな事をしてくれたもんだ。
「すまなんな、お前も疲れているだろうに」
「いや、実は緑がほとんど倒してしまったからな。私は数えるほどしか相手をしていないだ」
これまた緑らしいな。
「一つ…いいか」
「なんだ?」
凪は一度ためらった様子を見せたが、決意の眼差しを向けた。
「お前の事が知りたい」
「…… 何だ愛の告白か? ならば答えはNOだ」
俺の脳天に衝撃が加わる。鈍い音。 凪の木刀が俺の旋毛をとらえていた。
「そういう意味ではないわ!」
その声に緑が目をさまさした。 寝起きの悪い緑はしばらく焦点が定まらず、ぼーっとした様子だった。
一分ぐらい経っただろうか、彼女の脳はやっと起動したのだろう。 俺の顔をみてはっとした顔になった。
瞳がうるんでいる。今にも決壊して溢れでてきそうになっていた。
「おう、緑」
右手を軽く挙げ大丈夫であることをアピールした。
不意に緑が抱きついてきた。
「心配したんだゃから ほんとに」
ついに決壊し、俺の胸にシミを作り始める。
「おい泣くなよ。 鼻水、鼻水が! 腹に触れるな! 傷が開く」
「でぇもでぇも ふぇーん」
まだ離れない緑を親猫が子猫を連れゆくように凪が首根っこを掴んで引き離した。
「これ いちよう怪我人だぞ。 丁寧に扱ってやれ」
「じゃあ何か? お前は丁寧に扱わなければならない俺に木刀による強撃をくれたわけか? この、馬鹿力サディスト女!!」
ゴキン!
言い終わるのとほぼ同時、再び凪の木刀が俺の頭蓋骨を捕らえた。
「っつ」 脳が揺れた。
「これほどへらずぐちを叩けるのだから、もう大丈夫だ。 行くぞ緑」
凪に襟を捕まれ、ズルズル引っ張られていく緑は『広樹さんのそばにいるの〜』とごねていたが凪の力には逆らえなかった。
一人になりベッドに横になった。
そこに、おなじみの声が割り込んできた。
(元気そうだな)
「お前か… なんだやけにきれいにきこえるじゃねえか」
確かデスとの戦闘前にはノイズが激しかったが。
(それはな……
「今回は距離が近いからだ」
病室の入り口には鉄面皮白鳥がちょっとこじゃれた感じで立っていた。
なんか異様に腹がたつ。
「なんだ。わざわざ会いに来たのか?」
白鳥はベッドの隣の丸イスに腰をおろした。
「ああ、一様な。 だが…無駄足だったかな」
白鳥は手に持っていた物を差し出してきた。
「見舞いだ」
カゴに入った果物。お見舞いの定番アイテム。
よく考えたら昨日から何も口にしていない。
俺の腹の虫は嘘が嫌いなようで景気よくぐぅぅとなった。


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