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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-4

「そうと決まったら今度の日曜、10時に駅前に集合ね!」
 嬉しそうに言う都子の声に、彩霞と真由美も『オォーーーッ!』と、無駄な気合を入れ巻り、天に向かって拳を突き上げ答えると。
「ところで都子ぉ、交通博物館には『ぼくと握手!』気な人は居ないと思うぞぉ」
「えーーっ! レッドの人とかって……来てないかなぁ」
「佐藤さん、それって場所が違うってっ!」
「そうかなぁ〜〜……」
 などと、ふざけあって三人でゲラゲラ笑って居たのだった。
「なあ是奈っ! お前も交通博物館にはレッドは居ないと思うよなぁ」
 彩霞はそう言って抱えていた是奈に話を振り、ケラケラ笑って居たが。
「…………」
 是奈からは何の返事もなく、見ると彼女は彩霞のしなやかな腕の中でグッタリとして、既に落ちていた様子である。
 ……南無ぅ。


 そんなこんなで、日曜日。


 都子、彩霞、真由美の仲良し三人トリオと他(ほか)約1名は、都内に有る『交通博物館』へと遣って来たのだった。
 始めて訪れた交通博物館、その建物の入り口付近の壁には、まるで建物に突き刺さるかの様にして展示されていた、蒸気機関車と新幹線のオブジェを見るなり、三人は歓喜の声を上げる。
 都子などは、さしずめ小学校低学年のごとく「凄い凄ぉーーい!」を連発すると。
 今度は、彩霞と真由美の手を引っ張って「早く早くぅーー!」と、二人を急かしていた。
 彩霞と真由美も、そんな都子に引っ張られながらも、嬉しさ100倍と言ったところなのだろう、逆に都子を押しやって人ごみを掻き分けると、そのまま勢い良く博物館の入り口へと雪崩れ込んで行った。
 そんな三人の背中を見詰めながら、是奈は何やらこめかみの辺りを手で押さえながら、なんだかなぁ〜〜っ…… と首を横に振っては居たが。
 そでも4人分の入場券を握りしめた右腕を高く掲げたまま。
「ちょっと待ってよぉ! 佐藤さーん! 中村さーん! 藤平さんまでぇー! 言っとくけど入場料はあたしのおごりじゃ無いからねぇーー! 立て替えたお金ちゃんと返してよねぇーーーっ!!」
 そんな事を叫びつつ、とにかく彼女も博物館の中へと、駆け込んで行ったのだった。


 館内に入った三人組と他1名は、丸々一両 ”デンッ”と踏ん反り返るように、フロアーに置かれた巨大な蒸気機関車(SL)のディスプレイに悲鳴にも似た声を上げていた。もちろん是奈たちがSLなど見るのは初めてである。まさかこんなに大きいものだったとは思わなかっただけに、その驚きも一入だったのだろう。
 さっそくもって彩霞なんぞは。
「すっげーぞ是奈っ! みて見ろ、この蒸気機関車の車輪、俺の身長よりでっかいぞっ!!」
 とLSの動輪と背比べを始めたり。
「うっほー! きっついぜこの満員電車っ! 親父たち、こんなんで毎朝会社に出かけてんのかよっ! ったくぅサラリーマンは辛いぜぇ!!」
 などと展示用の通勤電車に訪れた人達と、わざとらしくすし詰めに成って、はしゃいでみたり。
「くっはぁーー! この電車の模型よく出来てるぜぇ! 俺が金持ちだったらぜってー、1個買うぜぇ!!」
 とか何とか、最早言いだしっぺ張りなはしゃぎっぷりに、
「やーねー彩霞ったらぁ。行きたく無いの、興味無いのって渋ってたくせに、ったく……1番子供じゃん」
 都子はそんな事をぼやきながら、目を細めて、まるでわんぱく坊主にせがまれて、連れてこさせられた母親のごとく、顔を膨らませながら、彩霞の素行に呆れていた。
 その横で真由美は、大騒ぎしている彩霞を見て、呆気(あっけ)に取られている人達に向かって「すみません、すみません」を連呼しながら、頭を下げ巻くっていた。
 それでも三者三様、及びプラス1名、好き勝手にほざきながら、あっちの展示物やこっちの運転体験シミュレーターなどを動かして、大いに盛り上がるのだった。
 そんな彼女達の事を驚きの眼差しでもって見詰めていた観光客や家族づれなのども、次第にそんな状況にも慣れてしまったのだろう。どうやら気にする者も居なくなり、彩霞も何時の間にやら、知らない小学生達と混ざって和気藹々、アトラクションを満喫し捲くって居た様子である。


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