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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-5

「う〜〜んっ駄目です、重くて動かないみたい。昔の鉄道員(ぽっぽや)の方々って、大変な苦労をしてたのね」
 真由美は展示物の中に有った、線路のポイントを切り替えるレバーを動かして見ようと、力一杯、大きな鉄のレバーを引っ張ってはみたものの、さすがに非力な真由美には動かせないらしい。痛そうに手を振りながら、顔を顰めていた。
「朝霞さんなら、これ動かせるかしら」
 真由美は側で見ていた是奈に、ポイントを動かして見せてと頼んでみるが。
 すると是奈は、薄ら笑いを浮かべながら、
「そう言うのはぁ…… あっほら、あの人に頼んだ方が早いかも」
 と、少し離れて騒いで居る彩霞を指差したりする。
 それを見て真由美も、やっぱりそうかしらぁ、と苦笑いを浮かべていた。
「中村さーんっ! こっちこっちぃ、このレバー動かしてぇー!」
 それでも真由美は、彩霞を呼びつけて、手招きをする。
 そんな真由美の呼ぶ声に誘われるまま、彩霞も。
「よっしゃーぁ! 任せろっ!!」
 とか何とか。
 彩霞は両掌(りょうてのひら)に ”ぺっぺっ!”と唾を吐き付けると、「おりゃあぁーー!」とばかりに、大きな鉄製のレバーを、ねじ伏せるが如く、押し倒したのだった。
 と同時に、大きな線路の分岐点が ”ガコン”と音をたてて切り替わり、それに連動するかの様に、すぐ隣に有った、これまた大きな腕木式(うでぎしき)の信号機も、ガッコンと赤から青へと、信号を変えていた。
 そんな様子を周りで見ていた人達は、何やらスタイルの良い女の子がギミックの実演をやっているぞと、彩霞を取り囲んで、オオーー! などと歓声の声を上げ始める。集まって来た子供達からも「お姉ちゃん凄ーーいっ!」と、尊敬の念を向けられたりもしていた。
 こうなると彩霞とて、気分が悪いわけも無く上機嫌だったりする。調子に乗ってガッツポーズなどして見せると、その後も ”ギッコン、バッタン”と無骨なポイントレバーを軽快に倒したり起こしたりながら、
「いいかぁよく見てろよぉ! このレバーを倒すと、あっちにある信号が青にかわるんだぞぉ。昔はこうやって人が列車の進行先を変えてたんだぁ。お前らも親父達の苦労には感謝しろよぉ」
 とか何とか、さしずめ小学生を引率してきた若い担任教師のごとく、知ったかぶりで即興な説明をしながら、嬉しそうに遊んでいた。
 是奈と真由美はそんな彩霞からやや離れて、他人の振りを決め込むと、二人して肩を落とし、渋い顔をして「なんだかなぁ……」と、呆れていた様子である。


「いやーぁおもしれーおもしれー! こんなおもしろい所だったとは知らなかったぜっ! こんな楽しい所が閉館しちまうなんてよ、まったくもったいないよなぁ」
 上機嫌に大手を振って館内を練り歩く彩霞の横で、是奈も真由美も、最早引いてしっまった様子である。ときどきお互いの顔を見合わせて ハァーッと出るのは溜息ばかりだった。
 ところが、そんな二人とは裏腹に、彩霞のテンションは上がりっ放しらしい。
「よっしゃー! 次へ行ってみようっ!!」
 と、今だ疲れ知らずで絶好調だったりする。


「ところで…… 都子のやつは何処へいったんだ?」
 そう言われて見ると、はて? どこへ行ったやら、先ほどから都子の姿が見当たらない。空かさず彩霞、是奈、真由美の三人は、辺りをキョロキョロと見渡し、都子の姿を探した。
 すると。
「あっ、居た居た。……都子、お前なにやってるんだ」
 都子は大きなSLがドデンと、踏ん反り返る様に展示されたフロアーの中ほどで、そこに有る大きなガラス張りの陳列ケースの中を覗き込みながら。
「ねえねえ見て見てぇっ! これって『デコイチ(D51型蒸気機関車のこと)』のナンバープレートだよ」
 嬉しそうに目の前に有る真鍮製のプレートを指差し、眼を輝かせていた。


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