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「初夜」は四十九日の夜
【その他 官能小説】

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「初夜」は四十九日の夜-3

「だめっ、義姉さん。目、開けてっ!。しっかり僕の顔、見てっ!」
「いや、はずかしい」

密やかに、奈美がつぶやく。吐息が漏れる。
熱い。
その口を覆うように、唇を重ねた。
舌を絡めあいながら、義姉は両手を私の背中にまわした。
そして、私を力一杯抱きしめた。


義姉・奈美27歳、私・芳樹32歳。

その日、私たちは『初めての夜』を過ごした。
といっても、ごく自然に、というわけではなかった。
奈美が、最後の一線を越えるのを拒むかのように、処女のように恥じらい、身を固く閉じたのだ。

無理もなかった。
大学卒業後、地元の銀行に勤め始めてすぐ、母親をがんで失った。当時、奈美はまだ22歳。
妹の美津子は高校を卒業し、ビデオ・アートの専門学校に通いながら、地元テレビ局でアルバイトを始めたばかりだった。
母娘3人の家庭。
大黒柱だった母親がいなくなり、社会に出て間もない姉妹に、母親が切り盛りしてきた家業をどうするか、という問題が突きつけられた。
繁華街・歓楽街の中にある生花店。お客はスナックやバー、クラブ、そこへ通う酔客たちだ。
夕方店を開き、閉めるのは夜中。朝早くには市場へ仕入れにでかけなければならない。
きつい仕事だけに、店員、アルバイトの入れ替わりも激しい。

奈美と美津子の出した結論は、こうだった。
生花店は奈美が継ぐ。母の時代に会社組織にし、従業員も10人近くいる。この人たちを切り捨てることはできない。幸いなことに、古参の専務が実質的に店の切り盛りの大半をまかされていて、素人の奈美が社長になっても、問題は起きない。
そんな理由からだった。

それを機に、2人は郊外に3LDKのマンションを購入した。
お店の2階と3階が住居、という職住一緒の生活では、肉体的にも精神的にもきつすぎる、と考えたからだ。
店の土地建物は姉の奈美、マンションは妹の美津子の名義にし、相続手続きを済ませた。

2年後、テレビ局の報道記者をしていた私と美津子が結婚、私が姉妹のマンションへ同居することになった。
美津子はバイトも専門学校もやめて専業主婦になり、姉の分も含めて家事一切を引き受けた。

それから3年。
美津子が急死した。ニュースでも連日大きく報道された、あの事故の犠牲になったのだ。
だが、いつまでも引きずって行く訳にはいかない。どこかで吹っ切らなければ……。
・・・・・・・・・・・・・


風呂から上がると、義姉が使っている和室に、布団が2つ、並べて敷かれていた。
台所の方から義姉が声をかけた。

「お布団、私の部屋に敷いたわ。よかったかしら!?」
「ああ、いいよ。でも、2つもいらないんじゃないの?」
「だってぇ〜、2人用のお布団じゃないし、最初から1つだけだと、いかにも、って感じじゃない!?」
「いかにも!、って何が?」
「え〜っ?、お休みするんじゃなくて、なんか『やりますっ』だけみたいな……」
「わっ、義姉さん、エロっ!。考え過ぎだよ。だれが見てるわけでもないのに!!!」
「そりゃそうだけど、私の気持ちの問題。いいわ。はいっ、ビールここ置いとくから、飲みながら待ってて。私、急いでシャワー使ってくる」


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