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あたしのYANG KEY
【コメディ 恋愛小説】

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あたしのYANG KEY-9

―ガラガラガラ…。

来たぁ!あとは彼が行動に移すだけ…。
彼は、黒板の前でピポパポと携帯電話のボタンを押している。しばらく沈黙が続いたかと思うと「どぉも、失礼しますぅ」という明るい彼の声がした。
よし、今だ!
「アデ、アデラ●スですか?伊藤先生!」
あたしは机の下から飛び出して、教室の電気を点けた。
くぅあ〜…あたしってば格好いいっ!!こういうの、テレビとか漫画とかで見たことあるぅ〜っ!ただ、机の下から出る時、頭打たなきゃ完璧だったのに…。
「何で結城さんがここに…?」
伊藤先生は急いで電話を切った。そして、目を白黒させてあたしを見た。
「オッ、俺もいますよ。伊藤先生?」
お決まりですが…みっくんも頭をぶつけながら机の下から這い出た。みっくん身長高いから飛び出せないんだよね…。
「柳田…何でお前まで」
「さあ、俺もよくわかんねぇっす」
あたしはみっくんのケツ肉をギュウッと摘んだ。
「伊藤先生、あなた、人の弱みを握るのが御趣味のようですね?」
銀渕眼鏡の奥で黒い瞳が泳ぐ。
「でも、最近はおとなしくしてたみたいだけど…でも、見ちゃったんですよねぇ?一年前、東 愛未と村井 北志がお酒を買うところ…」
「何でソレを…」
伊藤先生は瞬きが多くなった。それに落ち着きがなくなっている。
「次の日、先生は『放課後進路指導室に来るように』と愛未を呼び出しましたよね?その直後、みっく…満に殴られたんですよね」
伊藤先生は眉をしかめた。
「俺はお前がそれを理由に愛未になんかするんだと思った。だから殴ったんだ…。現に数年前、お前に脅されて学校辞めた奴いるもんな」
え?そうなの!?とあたしはみっくんを見た。もちろん、アイコンタクトであたしたちの会話は成立する。するとみっくんは「熊公が前に言ってた」と耳打ちした。
「お前がその生徒に何をしたかはわかんねぇが、絶対に愛未に何かしようとしてたはずだ」
「現に愛未、言ってました。『その日、進路指導室に伊藤先生は来なかった』って…」
「だからって何がいけないんですか?」
伊藤先生は開き直ったかのように、強きであたしたちに向かってきた。口元にはうっすら笑みが浮かんでいる。
「悪い事をするあなたたちがいけないんでしょう?弱みがあるということは、悪い事をしているという自覚があるからじゃあないんですか?」
うっわぁ〜、この先生根性悪ぅー!
「柳田、私はお前が嫌いです。言ったじゃないですか?お前が誰にも近付かないでおとなしくしてれば、生徒の弱みを探ろうとしない。黙ってれば、結城さんには何もしなかったのに…」
最低、最悪、このクソ教師ィ〜!!本当は言いたくなかったんだけどな…。
「目には目を、弱みには弱みにを、です!さっき言ったこと忘れたんですか?電話の相手、アデラ●スの相談係のお姉さんですよねっ!?」
伊藤先生がちょっとひるんだ。が、「何を言ってるんだ」と微笑した。
「そんな推測…」
「推測じゃないもん!毎日電話掛けてますよね、昨日も!」
伊藤先生の目の下がヒクヒクと痙攣している。『毎日』ってのはハッタリだったんだけどな…どうやら図星らしい。
「それだけじゃねぇぞ、あんたヅラだろ?ズレてんぞ!!」
伊藤先生は急いで両手で頭を覆った。みっくんは「嘘ですけど」と、笑った。あたしは吹き出したくなるのを必死で堪えて続けた。
「あと、クラブ燈のママさんにホの字だそうですねぇ。毎日、通っているそうで…。いんですか?奥さんがいるのに…」
ありがとう、熊公…ナイスな情報提供してくれて…!
「えーっ、まじで!?」
「信じらんねぇ!!」
二人分の声がしたかと思うと、掃除用具入れが勢いよく開いた。出てきたのは…


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