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あたしのYANG KEY
【コメディ 恋愛小説】

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あたしのYANG KEY-3

『みっくん、お歯黒知ってる?』
『お歯黒?知ってるぜぇ!これだろ!!』
『ギャッハハハハ!黒、歯ぁ、黒!!あたしもやりたい!』
『ヨリ、こんなところに黒ペンがっ!』
『おぉ、貸して!……どう?』
『ギャーッハハハハ!!さ、最高…!』
『満君!頼香ちゃん!馬鹿なことは止めなさぁーいっっ』

あたしは目を開けた。
この声…まさか、まさか、まさかっ!
「み…ちる?…みっくん?」
ヤンキー、いや、みっくんの顔がみるみる笑顔になっていく。
「そうっ!ヨリ、やっと思い出した?」
「うんっ!みっくん、久しぶりぃー!!」
「ヨリぃー!!」
「みっくんー!!」
アハハ、ウフフとあたしたちは手を取り合って飛び跳ねる。だってさ、だってさ、みっくんと会うの6年ぶりなんだもん!!ずっと会えないと思ってたんだもん!!テンション上がるぅ〜♪
「相変わらず仲良いなぁ、お前等」
ドアの方から聞き覚えのある声がした。
「熊公!!」
細身で長身、コワモテのおやっさんは、あたしが小学校の時、教頭先生だった。熊のように恐い先公。あたしとみっくんで付けたあだ名だ。
「出世したの?」
あたしはみっくんと踊りながら聞く。
「おう。高校の校長になっちまった!」
熊公はビッと親指を立てた。うっわぁ、これ懐かしい〜っ!!熊公は昔から嬉しい事があると、親指を立てて顔をくしゃくしゃにして笑った。
「あっ!」
あたしと手を繋いでぐるぐる回っていたみっくんが急に止まった。だけどあたしは回る気満々だったので、反動で脇にあったソファに突っ込んだ。
「ってぇ〜…」
「時間だ…」
「はぁ?何、時間って」
「じゃあなっ!!」
「はぁぁああ!?」
みっくんの動きは電光石火。あたしに手を振ると、窓に向かって走りだし、ぴょんと窓枠を飛び越え、とんでもねぇ早さで校庭を駆け抜けて行った。その姿はまるでゴキブリ…。小股なのに早い、あぁもろゴキブリ。
「満は昔から逃げ足早いなぁ…頼香?」
「うん…。そうだね」
熊公、逃げ足ってどういうこと?いつもならすかさず聞くんだけどな…ゴキブリみっくんを見つめる熊公の瞳が少し寂しそうだったので、あたしは何も言わないことにした。
みっくんの姿が見えなくなると、校長室のドアがノックされた。熊公が返事をすると伊藤先生が「失礼します」と入ってきた。
「結城さん、ホームルームが始まります。教室に行きましょうか」
「はい…」
うわぁ〜…ヤッバ。緊張してきちゃった…。よく考えたら転校なんてしたこと無いし…大丈夫かなぁ。溶け込めるかなぁ、イジメられないかなぁ。ねぇ、熊公…あたしやっていける?伊藤先生についていきつつ、部屋を出る時縋るように熊公を見た。
「熊公…」
熊公は恐い顔をくっしゃくしゃにして笑いながら、親指を立てていた。そして、一回大きく頷いた。

…ありがと!

あたしも笑いながら頷いた。ドアが閉まる時まで、熊公はずっとそうしてくれていた。不思議とさっきまでの不安は無くなっていた。


「結城さんは3年3組です。私たちのクラスは、みんないい子ばかりですよ。結城さんもすぐに馴染めると思います」
伊藤先生はあたしに、にっこり笑いかけた。
「本当ですか?良かったです。私も不安でしたので…問題ないですね!」
「問題?まぁ、無いですね…今のところ…」
「そっかぁ…はぁ〜、良かった…」
あたしは、よく鈍感だとかニブイだとかアホだとか…いやいや、アホは置いといて…とにかく、周りの変化に気付きにくいと言われる。その性格のおかげで、伊藤先生の目の色、雰囲気が変わったことに気付かなかった。


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