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あたしのYANG KEY
【コメディ 恋愛小説】

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あたしのYANG KEY-2

伊藤先生に校舎を一通り案内してもらって思ったのは、すごく綺麗な学校だということ。各教室には観葉植物が置かれてあり、一階の廊下には生徒達の様々な作品が飾られてあった。全ての窓はピカピカに研かれてあり、全体において広々とした空間が印象的だった。「新校舎にして、まだ5年しか経ってないんですよ」と伊藤先生は教えてくれた。お前も新築か…と心の中で呟いた。


校長室の前に来ると先生は立ち止まった。
「あとは、校長に挨拶をしてください。私は一度、職員室に戻っています。ホームルームが始まる頃、また来ますので。もし、校長がいらっしゃらなかったら適当に掛けて待っててください」
「わかりました」
先生は軽く会釈をすると、隣にある職員室に戻っていった。
ふぅ〜…。
あたしは軽く息を吐き緊張をほぐす。コンコンと立派な木目調のドアを叩いた。
「…失礼します」
伏し目がちに入って丁寧に両手でドアを閉める。ゆっくり顔を上げて、校長先生が座っているであろう机を振り返った。
「…………?」
男性が校長先生の机に突っ伏して寝ている。この学校の校長って随分お若いのかしら?学ランがご趣味なのかしら?それとも、外人かしら?髪の毛が金髪だわ。もっと詳しく言うと金髪に黒のメッシュだわ。まぁ、お洒落でいらっしゃるのね。うふふふふ。
「…ん…」
校長(仮)が呻いた。それであたしの思考は正常にフル回転する。待て待て待て待て!校長先生な訳ないでしょうが!!金パだし、指にはドクロのシルバーアクセ。これは…これは…。
『ヤンキーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
あたしは壁にバーンと張りついた。だけど、声は出していない。だって叫んだら起きちゃうじゃん!!心臓がバックンバックンと激しくなった。
「う〜…ん…」
うわぁ、起きる、起きる!ここで起きられたらあたしの学校生活終わりだろうな…。お金巻き上げられて、体で払わせられて、惨めな一生を過ごしていくなんて…そんなんいやぁーっ!
「ん〜っ…」
もうダメだ…。さようなら、皆さん。出来る限り壁に寄ってるけど、まあ、あたしの姿は丸見えよ…。
ヤンキーの目がゆっくり開かれていく。あたしの目も同時に見開かれていく。
「くぁ〜…あ?」
目が合ったまま、しばらく沈黙。
「…ヨリ?」
…は?今あたしの名前呼んだよね…。
「ヨリじゃねぇ!?」
「ヨリじゃねぇくねぇ…でございます…」
な、何でヤンキーがあたしの名前しってんの…!?
「やっぱヨリだ!!わぁーい、わぁーい!!」
あたしが頼香だとわかると不機嫌そうな顔がぱあっと輝いた。太陽並に輝いていた。だけど、あたしは余計恐くなってビクつきながらヤンキーに疑問を投げかける。
「あ、あ、あ、あの…どちら様…でございますでしょうか…」
あたし、ヤンキーに知り合いはいないはず…誰よ、この男はっ!!
するとヤンキーは万歳万歳をぱたっと止めた。
「…覚えてねぇの?」
イヤーッ!!怒ってるぅーッ!!
「俺だよ、ヨリ…」
…誰だよぉ〜…。一歩一歩ヤンキーはあたしに近付いてくる。健康的な肌に、真っ茶色の大きな瞳に、身長高くって世間一般的にいう『イケメン』のヤンキーなんて知らない!!別に誉めてる訳じゃねぇのよ!?特徴だよ、特徴!
ヤンキーはとうとうアタシの真ん前にそびえたって、顔を近付けてくる。まつ毛長いヤンキー…やっぱ知らないぃ!!
「…ひっ」
あたしは恐くなって目を瞑った。…あたし、どうなんのっ!?
「ヨリぃ…」
すごく近くでヤンキーの寂しげな声がした。その時、どうでもいい記憶がフラッシュバーック。


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