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最後の、最高の学園祭
【学園物 官能小説】

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本番に向けて 合宿1日目 その8  吹っ切った愛依の再出発-2

「いいのかなあ。もう………。」
「???」
「いいのかなあ、前に進んで。」
「って言うか、進まなきゃいけねえんじゃないの?」
「…だよね。いつまでも…止まってちゃだめ、だよね…。」
「ああ、忘れられないことがあるのは仕方ないけど、引きずられちゃだめだ。
 立ち止まるのは、また歩き出すためだ。」
「なんか、先生みたい。」
「ああ、俺は高校の教師になりてえ。」
「へえ〜。なんか、似合いそうじゃん。」
「だろ?」
「でも…。」
「でも、なんだよ?」
「説教、長そう。」
「うっせえな。わりーかよ?」
「ううん。悪くない。いいこと言う。感動した。心が動かされた。」
「………。」
「わたし、どうすればいいんだろ。変わるには…。」
「どうすればって………。」
「教室で、あんなに偉そうに、みんなに説教じみたこと言って。
 そのくせ、自分はどうすればいいのか、全くわかっていなくて。
 菅田君以上に、先生ぶっちゃって。」
「確かに先生みたいだったな、愛依の説教。 
 でも、それでクラスのみんなの目が覚めたんだぜ。」
「でも、わたしの目は、まだ覚めていない。人のことばっかり、偉そうに心配して。」
「………。」
「菅田君や鈴ちゃんや、みんなみたいに得意なことも、なりたいものの、無いくせに。」
「愛依。」
「合宿が始まってからだって、偉そうにルールだ、スケジュールだ、勝手に決めて。
 部屋割りだってそう。誰と誰を、とか、誰と誰はとか、
 人の性格とか、勝手に決めつけて。
 じゃあ、わたしはどうするの?わたしは何をしたいの?
 まだ、なんにも見つからない。
 何が好きなのか、誰のことが好きなのかもわからなくなっちゃった。」
「じゃあ、今から始めればいいじゃねえか。」
「今から?何を?」
「だから、じゃあ、まず、俺のことを好きになれ。」
「菅田君のことを?」
「ああ。まず、俺のことを好きになれ。この部屋にいる間だけでいい。」
「この部屋にいる間だけ?」
「ああ、ここでは俺だけだ。他の誰のことも考えるな。誰の心配もするな。
 俺のことだけを考えて、俺のことを好きだって思って、時間を過ごせ。」
「菅田君のことだけ………。」
「ああ、それで、人を好きになるていうのはどういうことか、どうすればいいのか、
 どうしたくなるのか、どうして欲しいのか、
 それを体験して、で、この部屋から出たら、俺のことは忘れていい。
 愛依自身が好きな奴を見つけろ。 
 好きな奴を見つけた時にどうすればいいのかを、俺を相手に練習すればいい。」
「好きになる練習?」
「ああ。男のこと、嫌いなままじゃダメだろ?
 変わるためには時には思い切ったジャンプも必要だろ?」
「思い切ったジャンプ?」
「そう。思い切って飛んでみる。怖いだろうけど、一度経験してみる。
 その経験が次に生きればいいだけのことだ。
 まずは、飛んでみろ。
 お前、覚えてるか?
 お前の、この合宿の個人的な目標。
 松先生に聞かれて、お前が答えたことだ。」
「それは。。」
「それは?」
「3Cの男子たちのことをよく知って、
 あ、男性って素敵なんだ、男性っていいなと思えるようになること………。」
「な?だろ?だから……練習だ。」

「す……まさ、き君。キス、しても、いい、かな………。」
「えっ?」
「だから………。キス、してもいい、かな。」
「誰と?えっ?俺と?」

愛依は黙って頷くと、目をつむった。
上下の唇をそっと合わせて少し上を向いた。
将暉はいつになく緊張しながら愛依の唇に顔を近づけていく。
愛依のまつ毛が微かに震えている。
「愛依。無理、しなくていいんだぞ。」
将暉は唇が触れる直前、動きを止めて言った。
愛依はゆっくりと目を開き、思いの外間近にあった将暉の顔に驚きながらも見つめた。
「無理なんかしてないよ。キスくらい、大したこと、無いもん。」
「お前、やっぱり無理してるだろ?」
「無理なんかしてないってば。キス位、さっきもしたもん。」
「さっきも?倫也と、か?」
「うん。」
「そっか。よかったな。」
「うん。」
「あいつ、優しかったろ?」
「うん。でも…。」
「でも?でも、なんだよ?」
「将暉君、も、優しい…。」
「よせよ、お前、こんな間近で。照れるじゃ…。」
愛依の唇が将暉の唇を覆った。
愛依のかわいらしい舌先が遠慮がちに雅樹の唇に割り込んできた。
二人はしばらく動きを止めたかのようにじっとしていた。

愛依が止めていた息を吐き出すように将暉から離れる。
「わたしの、ファーストキス、だった。」
「えっ?倫也としたんだろ?」
「あれは、倫也から、の、キス。今のは、わたしからした、初めてのキス。」
「お前からした?そっか、そう言うことか。」
「わたしのクラスの男子は、きっと、みんな優しいんだ。」
「愛依。それは違うって。」
「えっ?優しく、無いの?」
「そうじゃない。たいがいの男は優しいんだよ。
 お前をあんな目に合わせた奴らが優しくなかっただけなんだ。」
「男は、たいがいの男は、優しい?」
「ああ。愛依。お前みたいに…なんて言うんだろうなぁ。
 ウサギみたいにリスみたいに、仔犬みたいに、
 訳もなく守ってやりたくなるような可愛い女の子に優しくできないようなやつは、
 そんなやつは男じゃねえんだ。」
「将暉、くん…。」
「だから、倫也だってそうだ、健だってそうだ、流星だって旬だって、
 もちろん俺だって。
 みんなで男のすばらしさ、優しさをお前に教えてやらあ。」
「………。」
「愛依。今度は俺からキスするぞ。」
愛依は嬉しそうにほほ笑むとゆっくりと目を閉じた。
将暉は愛依を抱き寄せ、愛依の唇に自分の唇を重ねた。
愛依の手が将暉の背中に回り、その手に力が込められた。


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