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最後の、最高の学園祭
【学園物 官能小説】

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本番に向けて 合宿1日目 その8  吹っ切った愛依の再出発-1

「さて、と…。」
将暉は荷物を置くと、愛依に声をかけた。
「お前、休んだ方がいいんじゃないのか?ずっと頑張り過ぎで疲れてるはずだぞ。」
「えっ?大丈夫、だ、です。」
「あのさ、ため口でいいから。」
「あ、いや、でも。」
「おれのこと、怖いわけ?」
「あ、いや、別に、そういう、わけじゃ。」
「っていうより、お前、なんか気になることがあるんだろ?」
「あ、いや、別に………。」
「だから、バレバレなんだよ。お前の顔。まったく正直な奴だよな。」
「あ、いや、そんなことは………。」
「ないわけ、無いだろ?」
そう言いながら将暉は愛依の肩を抱き寄せ、ベッドの端に腰かけた。

「あ、いや、今は菅田君のことだけ………。」
「嘘つけ。正直に言えよ。気になるんだろ?ジュンコのこと。」
「あ、いや、その、別に。そんな。」
「どうする?部屋、覗いてみるか?」
「あ、いや、まさか、そんな。」
「なあ、愛依。お前さあ、信じろよ。」
将暉は愛依の顔を真正面から見つめて言った。

「信じろ?男のこと?」
「ちげえよ。」
「だって、健………。ジュンコと………。」
「あのさ。あいつだってジュンコの告白、聞いてたんだぜ?
 ジュンコの目一杯の思い、健に伝わらなかったと思うか?」
「あ、いや、だって………。」
「だからさ。信じろ、って言ってんだよ。」
「いや、男はみんな………。」
愛依は将暉から目をそらせてうつむいた。

「男のことを信じられないっていうお前のことをとやかく言うつもりはねえけどよ。」
「………。」
「信じろよ。健のこと。クラスメイトのこと。」
「………。」
愛依はゆっくりと顔を上げ、将暉を見た。

「あいつだって、ジュンコのこと、ちゃんと理解したはずだ。クラスの仲間として。」
「………。」
「だから、信じてやれよ。ジュンコのことも、健のことも。」
「………。」
愛依の目に涙が突然あふれ始めた。

「なに泣いてんだよ、お前。」
「ウッ…ウッ…」
「まったく。しょうがない奴だぜ、お前って。」
「ウッ…ウッ……ウッ…ウッ………。」
「ほら。こっち、来いよ。」
将暉は愛依の頭を引き寄せ、自分の肩に寄りかからせた。

「…ウッ…ウッ………。」
「ほら。大丈夫だって。俺だって、お前のクラスメイトだろ?」
「………。」
「お前、凄いよな。マジ、そう思うぜ。」
「………。」
「今回のことだけじゃねえ。お前、ずっと一人で戦ってきたんじゃねえか。
 辛くて苦しくて仕方のないことから、逃げずにやってきたんだろ?」
「…ウッ…ウッ………。」
愛依は目をしっかりと開けて将暉を見つめながら、泣き続けていた。

「男だって、いろんなやつがいるんだぜ。」
「………。」
「男だけじゃない。女だって男だって関係ねえ。
 信じていい奴と信じられないやつ。
 それを決めるのもお前だけどな。」

「………。」
「まあ、俺がお前の目から見て信じられるやつかどうかは知らねえけどよ。
 健のことは信じてやれよ。
 あいつは、見かけほどにバカじゃないって。
 ジュンコのこと、ちゃんとわかってってるって。 
 分かってて、そのうえであいつなりにちゃんとやるって。
 俺はそう信じてる。
 だからお前も信じてやれよ。
 健のこと。
 それ以上に、ジュンコのことを。」

「ジュンコのこと?」
「そう。あいつだって、自分の思いをちゃんと大切にできる女だってことさ。
 いざとなれば、あいつは、自分自身のことをちゃんと守れる、って言うことだ。
 ずっとお前のことを守ってきたんだからな。」

「………。」
「ほらぁ。もう、泣いてねえで、いい加減、俺に気持ち、向けろよ。」
「………?」
「だから。今は俺との時間だろ?もっと俺のこと、考えろって。」
「………。」
「この合宿、お前にとっても大事なモノだろ?
【今まで】を捨てて、【これから】に向かえるかどうか。」
「………。」

「お前だっていつまでも過去にこだわって、
 前に進めないんじゃどうしようもないだろ?」

「………。」
「ほら、何とか言えよ。ジュンコのことなんかよりも、
 俺は、お前のことが心配なんだよ。」
「………?」
「ほら、もういいから。こっち向けよ。」
「………?」
「大丈夫だって。お前の嫌がるようなことは絶対にしねえから。
 俺だって、お前のこと、ちゃんと心配してんだぜ?」
「………?」
「ほら、まだ疑ってやがる。」

将暉は愛依を抱きしめた。
強く強く抱きしめた。
(俺はお前の味方だ。)
その思いがほんの少しでも愛依に伝わるように思いを込めて愛依を抱きしめた。

愛依は将暉の暖かさを全身で感じていた。
将暉の優しさにずっと包まれていたいと感じ始めていた。
確かにジュンコのことが心配で仕方ない。
けれど、ジュンコのことはジュンコ自身が乗り越えていくしかないのだ。
それと同じように、自分もまた、自分自身で乗り越えていくしかない。
今までもそうだったように、これからも、
いや、今、この状況を、乗り越えていかなければならないのだ。

「………あった…ね。」
「あん?なんて言った?」
「暖かいんだね。」
「暖かい?」
「うん。」
「何が?」
「菅田…くん。」
「俺が?身体、熱いか?」
「ううん。身体もだけど、心が。」
「お前、よせよ、照れるじゃねえかよ。」
「だって、ホント、暖かい。」
「……。」
「わたしの、男の思い出は…。土の…冷たさ、だったんだ。」
「土の冷たさ?」
「そう。公園でレイプされた時、土の上に倒れて、男たちが覆い被さってきて、
 土が冷たかった。それがわたしの、男の人の…思い出。」
「……。」
「でも、倫也君も…菅田君も…。とっても暖かい。」


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