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愛人
【SM 官能小説】

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愛人-14

おそらく夫はそのふたつの記憶の境があいまいでした。もしかしたらふたつの記憶は、ひとつのものではないかという疑念が彼を悩ませ続けていました。《目の前で少女が誰かに強姦された記憶》と、《夫自身が少女を強姦したという記憶》です。夫は、記憶の中の少女が、愛人になったあなたであったことに気がついていたようです。彼はあなたを支配することで記憶を甦らせようした……いや、私は、それはあなたに対する夫の愛ではなかったかと思っています。私がけっして得ることができなかった夫の愛……その愛がどんな形であろうとも。

こうして手紙を書いたのは、津村の死をあなたに知らせるためだけではありません。あなたに私は謝らなければなりません。あなたが夫と森に出かけた最後の日の出来事のことです。すべては、私が仕組んだことでした。夫を痛めつけ、あの醜い男に、夫の目の前であなたを強姦させることを依頼したのは私でした。なぜ、そんなことを……をあなたはお思いになるでしょうね。それは、夫をあなたの記憶の呪縛から解き放ち、夫をふたたび私のものとするために必要なことでした。私はあなたたちの姿を樹の陰でじっと見ていました。あなたがあの男に犯され、肉体的に不能であるはずの夫がそのあなたの姿に欲望をむき出しにして射精する姿を。夫はあなたが自分から奪われることに初めて欲望と悦びを感じていました、それは夫の記憶の中で、あなたが彼のものであり続けていたからです。

フィンランドに来てから、三度目のクリスマスを迎えようとしています。
そろそろ使用人の男がこの部屋にやってくる時間です。彼は私を痛めつけるために鞭を手にしてここに来るのです。私と彼がどんなことをここでしているのか、あなたにはお分かりのことだと思います。夫を忘れるためではなく、夫があなたにいだいた愛に苦しむためです。けっしてあなたを恨んでいるわけではありません。鞭に苛まれる苦痛こそが、夫にいだき続けることができる私に残された愛だからです。

もう日本に戻ることはないと思います。夫が愛した美しい森を見ながら、安らかにここで眠る夫を見守り、余生を生きていくつもりです。
今は、夫の愛人になっていただいたあなたにとても感謝しています。

……津村 キミエ


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