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遠恋カレンダー
【女性向け 官能小説】

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9月:ドイツ-12


ドイツ最終日、ゆっくりと朝食をとる。
ドイツのパンは美味しくて、小川くんに教えてもらったように
バターをたっぷりぬって、もうこの味もなれたもんで。

お気に入りのパンさえできた。

「今日は早めにフランクフルトに行って少し観光しよう」

そう笑ってくれるけど
一瞬仕事は平気なのかと言葉が出そうになる。

「ねぇ?私、日本でガイドブックを買ったのよ」
「うん。どこか行きたいところがある?」
「・・・じゃなくて。フランクフルトはきっとここより観光客が多いだろうし私一人で周れると思う」

「え・・・」

「シュトゥットガルトの駅に送ってくれれば大丈夫よ!」
私は、無理やり元気な声を出した。

「ほのかさん」

「そのまま仕事に戻って」
「・・・・」

「また来るわ!その時また案内して!」

また来るわ。

その言葉に二人の色々な感情が織り交ぜられていた。

「ありがとう」

そう言った小川くんはやっぱり仕事で私のために無理をしていたんだろう。
下を向いた小川くんの表情は見えなかった。

「愛してるよ」

小川くんはたった一言だけ、シュトゥットガルトの改札で私を抱きしめてそう言った。

「私も愛してる」

私も一言だけ、心からそうつぶやいた。

改修中の駅は・・・
まるで私の心の中のようで。

お互いが発した「愛してる」という言葉の通り
私たちは強く愛し合っているのか・・・

それとも2人の愛はこの駅のように改修が必要なのか・・・

泣きそうになる顔を見られたくなくて
元気に手を振って改札の中に入る。

泣きそうな心とは裏腹に涙はひと粒も出てこなくて
フランクフルトでは観光する気にもならなくて
何時間も何時間も、何時間も・・・空港のベンチでじっと座っていた。




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