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オーディン
【ファンタジー その他小説】

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オーディン第四話『大きな木の下で・後編』-2

しばらくして、ウトガルドの館へ長髪の男がやってきた。男は大声で言う。
「ウトガルドよ、二人をかくまってなんの得がある?黙って渡せば見逃してやろう」
館の大きな扉が静かに開く。そして大きな拳が長髪の男を殴り飛ばした。
「何の事かね、妙な事を言うと…、ただではおかんぞ!!」
防御の姿勢のまま、地面を後ろ向きに滑る長髪の男。男は笑っていた。
「やってくれるねえ、“ウトガルド・ロキ”!!」
地面を滑り終えると、男は剣を抜き、ウトガルドのもとへ飛んで行った。
ウトガルドの前に突然三人の巨人が現われたが、一瞬にして切り捨てられた。
ザクッ、男の剣が何かを串刺しにした。
「ぐふ、聞いた以上の化け物だな…」
ウトガルドの巨体が宙に浮いていた。
「ふふふ…、ふははははは」男の剣は炎をあげ、瞬く間にウトガルドをその炎で包みこむ。
「おとなしく二人を渡せばよかったものを…」
ウガアアアア、巨人の声にならない声が山に響きわたる。
「フレイ…、逃げろーー!!」




フレイとフレイヤは山を下っていた。その途中突然どこからともなく、ウトガルドの叫び声が聞こえた。
「フレイヤ、ウトガルドがやられたみたいだ…、急ぐぞ」
フレイヤは黙って頷く。
坂道を下りおりる二人。時折草むらから現われるアラストールたちを瞬殺しながら進んで行く。
バサッ、突然上から何かがふってきた。アラストールと判断して剣を抜くフレイ。そしてその表情が一瞬にして凍りついた。
「フレイヤ、この“腕輪”を持って逃げろ!!」
フレイはフレイヤを守るように左腕をあげる。そして彼女の額に手を当て呪文を唱えた。
「どうしたの?」
「…また会おう」
「!?」





フレイヤは気付くと木の枝にぶら下がっていた。手にはフレイから受け取った“腕輪”がある。
「兄さん…」
フワッ、淡い光と共に、鎧をまとった女が現われた。フレイヤは短剣を構える。
女は首を振るとこう言った。
「そう怖がるな、我が名はウルズ、この“木”を守る者。お前の敵ではない」
「あなたがウルズ…」
フレイヤは名前を聞くと安心しては短剣をしまった。
「ここは、聖樹なのね?」
「そう、ここは聖樹ユグドラシルじゃ、知らぬわけではあるまい?」
ウルズは笑顔で言った。
「ここがあの聖樹…、しかしなぜ私はここに?」
ウルズは溜め息をつく。
「時空転送(テレポート)のルーンを使ったのだろ?」
「…兄さん!!兄さんは!?」
ウルズは首を横に振った。
「…お前一人だ、時空転送は体力の消耗が激しい。だからお前は疲れて眠っていたと思ったのだが」
フレイヤは肩を落とし、つぶやいた。
「そう…」
「お前を迎えにきたぞ…、スルトが」
「スルト…、世界を焼いた男…、何で私たちは追われなきゃいけないの!?」
溜め息をつくウルズ。
「…、知らずにその“腕輪”を持つか…」
ウルズは腕を組み目を瞑ると下を指差した。
「そこにいる、うるさい男とその狼がスルトを追い払った、彼らについていくといい、お前を助けてくれるはずだ」
「あの人たちが…、ありがとうウルズ、“また会いましょう”」
ザザザザザ…
木の葉の中を落ちていくフレイヤ。彼女は心に誓った。

兄さんの仇、必ずうってみせます!!


大きな木の下で、ファウストとその狼が、バイクに乗って今にも出発しようとしていた。


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