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THE UNARMED
【悲恋 恋愛小説】

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THE UNARMED-9

4. 葛藤
(気にして、いたのか?)
俺は例の木陰で寝転がりながら、そう心の中で呟いた。
レイチェルがあんなにも感情を露わに俺に突っかかって来ることは、珍しい。
いや、今までにないことだった。
(女は足手まといだと、『お飾り』と言ったことを……そんなに気にしていたのか?)
空は曇っていた。
鉛色の空を見つめながら、俺は考えを巡らせる。
奴の悔しさに歪む顔が頭にちらついた。
「は……俺が気にすることじゃねえか」
その奴の顔を振り払うように俺は声に出して言った。
そうだ、奴のことなんか知ったこっちゃない。
奴には奴を気遣ってくれる相手がいるじゃねえか。
そいつに任せておけばいい。
(そうだ、そいつに任せておけば……)

「ッ、くそったれ!」
俺は思わず罵った。
一体……一体どうしたと言うんだ?
あれほど奴を憎んでいて、あれほど奴の落ち込む姿、悔しがる姿が見たかったんじゃないのか?
それなのに、どうして俺が奴を気遣う。
「くそったれ、どうしたってんだ」
どうしようもない苛立ちを感じ、俺は立ち上がる。
頭にちらつく奴の姿をどうにか振り払うと、仲間が集まっているだろう広場へと向かった。



5. 出陣
――風強く、粉塵が舞う戦場。
後にゼノ・バルトの戦いと呼ばれるこの戦闘は、ヴァナ=ジャヤの荒野で行われた。
ヴァナ=ジャヤの領土とは言っても、そこは殆どガルシアとの境にある。
陣屋もガルシアの街からさほど遠くないところに張られた。
休戦期間が明けての戦いは凄まじいもので、俺の仲間も幾人も負傷していた。
「風向きが変わったぞ、ヴィクセル! 小隊を率いて東を攻めるのだ!」
俺に命令するそいつは、レイチェル・ギルガ騎士長ではない。
緑のマントを翻し、颯爽と馬を駆るその男は、レイチェルの許婚でもあり騎士団長――アインヴァントだった。
先に俺達を率いていたレイチェルは敵の攻撃に負傷しており、今は戦場に出ていない。
肩口をばっさりとやられたにもかかわらず出陣すると言う奴を、アインヴァントは自分が出る代わりに休んでいろと言って説得したのである。
アインヴァント騎士団長自らが俺達第三傭兵団隊を率いると言うことに、上では些か揉めたようだが、まあ俺の知ったこっちゃない。
しかしこのアインヴァント、流石に騎士団長と言うだけはある。
的確な指示と機転、巧みな馬術と剣術には俺も舌を巻いた。
正直、奴がいなければ危うかった面もある。
俺は出陣する前にレイチェルに言われた言葉を思い出していた。
『アインヴァント騎士団長は素晴らしいお方だ。私よりはずっとお前達の頼りになるだろう。けれど、いいか。この戦いは厳しいものになるだろうが、決してあの方を死なせてはならない。いいか、絶対だぞ』
(決して死なせてはならない、か)
奴の言葉を反芻する。
それは、そうだ。
ガルシア騎士団を纏め上げる騎士団長、王国が失ってはならない人物なのだから。
しかし奴の言葉はその意味だけに限ってはいないだろう。
(……許婚、か)
「くそったれ」
いつの間にか、その言葉が口を突いて出た。


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