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THE UNARMED
【悲恋 恋愛小説】

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THE UNARMED-7

「勝負あったな」
「まだだ」
振り向きざまにレイピアで突く。切っ先は俺の肩口を掠める。
肩口の布が裂け、肌が露わになった。幸いにも、皮膚が裂けるのは免れたようだ。
奴がレイピアを引くより早く、俺は奴の手首を捕まえる。
「正気か、お前。何で、どうしてそこまでむきになる」
俺の言葉に、レイチェルは歯を剥いた。
歪められたその顔に思わずぞくりとする。
「……貴様に何が分かる」
最初は、静かに言った。
「貴様に何が分かる……貴様に何が分かる!」
そして段々と声を荒げるレイチェル。
「名のある家に生まれ、幼き頃から剣を握って来たにもかかわらず、女で騎士長などありえないと! 親の七光りだと! そんなふうに言われるこの気持ちが貴様に分かるか!?」
レイチェルが怒気も露わに言葉を放った。
驚いたのは俺だ。
奴が俺に対して感情を此処まで見せたのは、初めてだった。
いつも冷たい瞳と言葉であしらう奴が、こんなにも感情を出して熱くなっている。
「そして、騎士長になったらなったで『お飾り』だと……!? 私は……!」
頭を横に振り、奴は言う。
「ただ、認められたいのだ、私は……!」

――これが、レイチェル・ギルガか?
あんなに冷たい瞳で人を見下していたレイチェルが、こんなにも熱く苦しみに顔を歪めている。
「……お前」
俺は何とも言えず、ただそう呟く。俺の心が酷くかき乱される。
くそったれ。
自分の中で酷く苦い感情が渦巻くのを感じた。


「何をしている!」
良く通る男の声に、俺とレイチェルは同時にそちらを振り向いた。
そこには、緑のマントを羽織った男とハウンズ傭兵団の団長を努めるサバーカの姿があった。
そのうち緑のマントの男は、俺達の方へ歩いて来ると、酷く驚いたような顔を見せた。
「レイチェ……ギルガ騎士長、何をしているんだ」
「ああ、軽く手合わせしていただけだ」
男の問いに、レイチェルは再び落ち着き払った様子で答えた。
「手合わせ、だと? このような場所で真剣で……些か軽率ではないのか、ギルガ騎士長」
怪訝そうに眉根を寄せた男に、レイチェルは口の端を持ち上げて答える。
「あなたに迷惑をかけるつもりはない、アインヴァント騎士団長」
言うレイチェルに、更に男の眉根に寄せた皺が深くなる。
そのレイチェルの物言いが妙に穏やかで淑やかに聞こえたのに、俺は少しだけではあるが眉根を寄せた。
男はレイチェルの肩に手を置き、言った。
「双方に怪我はないようだし、私も今回のことを咎めるつもりはない。ただ……」
ちらり、と男は言葉を濁らせて俺の方を見やった。
その何か言いたげな視線に、俺は怪訝な表情で返す。
「いや、何でもない。とにかく、今後このような行動は慎みたまえ」
「分かっている、すまなかった。あなたに迷惑はかけない」
男の言葉にレイチェルはそう答えると、俺を一瞥して去って行った。
残された俺は、奴の些か不可解な行動に疑問符を浮かべる。


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