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The eighth dream
【女性向け 官能小説】

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The eighth dream-4

「あ…お…とも、み…」
塞がれた唇、不自由な唇で、幸平が私に促す。ふいに出来る隙間。唾液の糸を引いて離れる互いの唇。
「青、青、信号」
いつの間にか対向車が、いた。いつの間にか後続車が、いた。私が演じた嫉妬深いキスは、数人の視線の中に、あった。
「行こうよ、早く…」
唇で光る唾液を舌先で掬いながら幸平が呟く。冷めてゆく肌の熱を惜しむように幸平が呟く。ゆっくりと走り始める。先を急ぐ火照りを抑えて、ゆくり、ゆっくり、アクセルを踏む。幸平の手は、左の太腿には、ない。左の脚の付け根を滑り落ち、熱に潤んだ私の中心に、置かれている。
触るわけでもない。弄ぶ(もてあそぶ)わけでもない。例えて言うなら、ただ私の熱を感じ取ろうとしているかのよう。ただ私の熱を吸い取ろうとしているかのよう。動くでもなく、でも確かな意志を持って、私の中心に掌を置いている。
いやらしい記憶と打算。来た道を帰る道にするなら、右に進むべき三叉路を左に折れる。ホールに向かいながら記憶していたこと。オリジナル曲を演った後の幸平の高ぶりを知った上での打算。ライブの後、一番近くにあるホテルは何処かを確認していた、私。この三叉路を左に折れれば、その先にあるホテルが、一番近いことを知っている私。
無言に近い幸平。聞こえはしないか恐る恐る唾を飲む私。やがて視界に現れるホテル。“IN”の文字と矢印が、彼方に見えてくる。
「もう、そんな目をしないで…傍にいるから…その涙 “明日”に変えて」
ふいに幸平が口ずさむ。“8番目の夢”という幸平のバンドのオリジナル曲。ライブの最後に必ずプレイされる曲。初めて幸平に抱かれた夜に、8番目の夢というのは“8日目”のことなんだ、と聞いた。1週間を二人で過ごし、8日目を迎えることが出来る幸せ。それを願い、誓ったラブソングなんだと話す幸平の照れ臭そうな笑顔が、たまらなく愛しかったのを覚えてる。
ホテルの入り口を視線で捉えウィンカーを点ける。カチカチと鳴るウィンカーの音に、鼓動が重なる。幸平がシートから身を起こし、首を回す、2度、3度…回す。
闘争心にも似た幸平の興奮が、私にも伝わってくる。幸平から降ってくる火の粉に、私の神経も静かに発火を始める。指を結んで進む。肩が触れたただけで喘いでしまいそうな、ゆらめき。
「どの部屋にする?」
幸平が聞いてくる。別にどんな部屋でも構わない。大体、聞いてくる幸平だって部屋を写したパネルをまともに見ていない。軽く手を挙げて、一番指に近い部屋を指す。そのまま、進む。互いの影を踏みながら、進む。結んでいた指が解かれて、優しい腕が腰に巻かれる。思わず漏れる息。今にも、この場所で、喘いでしまいそうな自分を奥歯で噛む。
幸平がドアを、開ける。私を先に部屋に入れる。背中に感じる、熱。閉じられる、ドア。両の腕が、大きく私を包む。うなじを滑る幸平の頬が、熱い。
大きく包んだ腕の中で、私を巧みに操る。うなじや耳裏を食み(はみ)ながら、私の体の向きを変えてゆく。部屋の白い壁がゆっくり回って、閉じかけた視界の大半を幸平の顔が占める。
暴れる熱情を持て余した幸平の顔が、正面に来る。背骨を反り、生唾も飲み込めないまま、キスに応える。差し込んだ舌先は、痛いほど幸平に吸われ、時折当たる歯が可笑しくも刹那い吐息を呼ぶ。
互いを引き寄せるがあまり、私の乳房は押し潰され、幸平の隆起した“象徴”が下腹部をくすぐる。
「いいライブだったろ?朋美…」
首筋にキスを移しながら幸平が聞いてくる。
「う…ん」
喘ぎと呻きの狭間で、私は答えてあげる。ひと際背骨を折られ、幸平が乳房に顔を埋めてくる。
「あぁ…っん」
堪え切れず喘ぐ私の脳裏に“8番目の夢”のフレーズが、優しい愛撫となって聞こえてくる。
“あなたの風のような髪に、顔を埋めていられたら、どんなに幸せだろう…”
仰け反る背中。差し出す乳房。そこに埋められる、愛しい熱。私が、幸平に、幸せを与えることが出来る存在だという悦び。私が、幸平の、暴れる熱情を一滴残らず吸い取れる存在だという歓び。
だから、感じる。だから、濡れる。
だから…欲しい。


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