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翔べない鷹は愛しきかな――僕はあの日常を絶対忘れない。――
【悲恋 恋愛小説】

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翔べない鷹は愛しきかな――僕はあの日常を絶対忘れない。――-5

「いっそ私も死んじゃいたい。」

タカはどうやって加奈を強くさせてたの?



『俺だって寂しい時ぐらいあるよ。だから支え合って生きてかねぇとな。』


「死ぬなんて言うなよ。」
本来タカの体が燃えるはずの炎に加奈が飛び込もうとしている。
僕は加奈を掴む力が強くなる。
「…生きてる意味がない。」
「加奈が死んだら僕はどうしたらいい?」
お願いだ。これ以上寂しさを増やさないでくれ。
「じゃあ、翔も一緒に死ぬ?」
さっきとは反対に加奈が僕の腕を掴む。

ごめん、加奈。それはできない。
それは、
「タカに失礼だろ…?」

加奈は僕の手を離した。
「私はどうしたらいいの?タカちゃんがいない世界なんて…。私なんかよりタカちゃんに生きてほしかった!」

ねぇ、タカ。僕はタカのようにはなれないけど、ずっとタカを見てきたんだ。
強くはなれるよね?

「そんな事、言わないでくれ。僕は加奈が好きだ。死んでほしくない。僕が加奈の人生、楽しくさせるから…。」
「………。」
「それにタカが自分と引換えに守った命なんだ。…大切にしてくれ。」

「……………うん。」
小さな声だったが加奈は確かにそう言った。

うん。ありがとう、タカ。
今度はタカが僕の後ろ姿を見ててよ。

僕は当たり前だったあの日常に感謝するよ。そして絶対に忘れない。


加奈はタカの顔を優しく撫でていた。
タカの体がなくなるまで。





あれから何年だ?

「今日でちょうど10年だね。」
そうだ、10年が経った。
「あっ、ほら行くよー!愛里っ!」
「お母さん、急いだら転ぶのよー?」
「お母さんは大丈夫よ。愛里の方がよそ見ばっかなんだから転ぶわよ。」
「じゃあ愛里、寝転がるー。」
「は?」
「そしたら転ばないよー?」
「あのねー…」
「くくっ」
「翔ってば、何笑ってんのー?」
「や、愛里が加奈の小さい頃そっくりで、…ははっ」
「どういう意味よー?」
「はははっ」

あれから10年だ。長くて短かった、なんていうとありきたりだけど、僕たちはまたあの頃のように笑い合っている。


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