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翔べない鷹は愛しきかな――僕はあの日常を絶対忘れない。――
【悲恋 恋愛小説】

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翔べない鷹は愛しきかな――僕はあの日常を絶対忘れない。――-1

いつもの昼休み、いつものメンバー、いつもの屋上。僕はこのいつもの光景が結構好きだ。
「うまいっ!うまいなぁ〜、加奈の手作り弁当はっ!」
「ふふっ、大袈裟だよ、タカちゃんは。」
「いや、まじで。翔も食う?」
「…や、食べないし。」
「なんでー!翔も食べてよー!折角私が作ったのにー!」
「…や、タカのために作ったんでしょ?」
「加奈、分かってやれ。そういう年頃なんだよ、翔は。」
「どういう年頃だよっ!」

僕等3人は小学校から今の高校までずっと一緒で、いわゆる幼なじみだ。だからかな、2人の事は僕が一番知ってると思う。…といっても、加奈の事はタカが一番知ってるんだろうけど。

「てか、最近冷たさ増してるよ、翔?」
加奈が僕の顔をまじまじと見る。
「…だって僕って明らか邪魔者じゃない?」
「んな事ねぇって!大体なぁ、3人でいるのはもう‘当たり前’なんだよ!今更加奈と2人にされても嬉しくねぇんだよ。むしろ悲しいね!」
「何それ!なんか今の私に失礼じゃない?」
「気のせいじゃない?」
「そっか。」
「いやいやいや、気のせいじゃないと思うよー?」
「ははっ、翔、ナイスツッコミ。」

3人でバカやって大笑いしてこの光景が何年も続いてきた。僕はこの空間が好きだ。
でもさっき加奈が言った通り、僕は最近なんだか無性に苛々して2人を避けていた。いつからだっけ?…あぁ、タカと加奈が付き合い出した時からだ。確か…そう、3ヶ月くらい前だ。


「私ね、タカちゃんの事好きかも…。てか好きっ!」
いつもの屋上に僕を呼び出して加奈はそう言った。
まぁ、加奈がタカの事好きなのはなんとなく予想してたけど、実際言われると…ね。でもタカも多分…。
「告白してみたら?」
「えっ、でっ、できないよ!…だってタカちゃんには私が小学生の時におもらしした事知られてるし、絶対好きじゃないよー!」
「いや、そんな昔の話…大体そんな事言ったらタカなんて小学校の時、クラスの女子にズボン隠されて大泣きしてたじゃないか。今のタカじゃ考えらんないよね。」
「ふふっ。そういえばそんな事もあったね。あの時は翔がズボン取り返してきたのよね。……はっ、まさかタカちゃん、その子の事好きなのかも!どうしよー!?」
「なんでそうなる…。ないから。その発想も訳分かんないけど、あの子遠く引越しちゃったし有り得ないから。」
「そっか!良かった。」
「………てか告白しなよ。僕が見てる限りタカは加奈以外の女子とあんま喋んないし、もし付き合えたら嬉しくない?だから、うん。言った方がいいって。それにもしフラれたとしても壊れる関係じゃな…」
「そっか!そっか、そっか。うん、嬉しいよね。よし、タカちゃんに告るよ!」
そう言って加奈は教室へ戻っていった。
…てかさぁ、人の話は最後まで聞こうよ、加奈。

その次の日、タカと加奈から付き合い出した事を聞いた。
「ありがとね、翔。」
加奈は笑顔でそう言った。
僕はなんだか複雑だった。2人が幸せになって良かったとは思う。とてもお似合いだし。だけどなんで加奈にアドバイスしちゃったんだろう、とか思ったり…。てか、僕の知らない所で2人が想い合ってたのがすごく嫌だ。ずっと3人一緒だったのに。…なんて気持ちがいっぱいで僕は2人にどう接したらいいのか分からなくなった。
まぁ、最近は慣れたけどね。2人が付き合ってても僕等は何も変わらないし。というか2人が普通なのに僕だけ意識してても馬鹿馬鹿しいしね。
いつか2人の結婚式に僕が最前列に座るのも悪くないなぁ、と思ったり。


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