投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

〜吟遊詩〜
【ファンタジー その他小説】

〜吟遊詩〜の最初へ 〜吟遊詩〜 36 〜吟遊詩〜 38 〜吟遊詩〜の最後へ

〜吟遊詩(第四部†砂漠の国ディザルト†)〜-3

木で出来た丸テーブルに腰を降ろすと、あっと言う間に冷たいミルクと軽食が手際良く出てきた。
「それで、気丈な奥さん!!何があったんですか?ここ最近毎日あぁだって言ってましたよね?」
ユノはミルクを飲み干すと、詰め寄るように尋ねた。
「気丈な奥さん!?あっはっはっはっは。アタシの名前は“リン”さ。さっきの続きなんだけど……あんた達、ここ風が強いと思わなかったかい?」
最初は馬鹿笑いしていたリンも後半は少し声を低くして二人に問掛けた。
「そうですね…風は異常に強かったです」
エアルがユノに目をやってから答えた。ディザルトに入る前にユノがむせたのを思い出したのだろう。
「実はね…あの風は東から吹いてんだよ!」
「東と言えば私達が入ってきたのと逆の方向…?」
ユノは頭にぼんやり地図を浮かべて言った。
それを聞いてリンはテントの奥から大陸の地図を持ち出してきた。古くなり固くなった紙質の地図は広げられた拍子に生暖かい風を起こした。
「あんた達は西から来たんさね?クロック・カット側からってわけか」
リンがクロック・カットを指差す。ディザルトとクロック・カットとの間には短い海がある。二人はこの海を越えるために飛行船で来たというわけだ。
リンの指は問題の東側に移って行く…。
「風は多分この辺から吹いてる。」
リンの指はディザルトとその隣国、ウォルターの国境にある山を指していた。
ディザルトとウォルターはインテリオキングダムを囲む国の中では珍しく、大陸続きになっている。付け足すと、ウォルターもメインブロックがあるはずの国だ。
「その山がさっきのケンカと関係があるんですか?」
ユノが不思議そうに尋ねる。
「そうそう!風がやっかいってわけじゃないんさ!もともとこの山で降ってる雨を強風が運んで来てさ!!まぁつまりは雨雲をね……。あの殴った男は水売りさ。なのに風が吹けば大雨が降ってねー、水売りとしては商売あがったりってわけ!毎日決まった時間になるとスコールなみにザーザー!」

(雨雲を運ぶ…)
ユノがエアルを見た…。
(砂漠に大雨が降る?)
エアルもユノを見た…。
目が合った二人は、ハテナマークを顔色に浮かべている。

ハタと気付いてユノがリンに向き直った。
「でも砂漠に水は有難いですよね!?」
「そりゃぁそれなりの量は必要さー?でもねぇ…降りすぎて収入源だったサボテンは根腐れしちまうし、水を含んだ砂地を歩くのはラクダには負担が大きいんさ!かと言って植物なんか育ちはしないし…なんせ土がない!あたしらの生活は砂と共に確立しちまってるからね」

(サボテンねぇ…そういやぁここに入ってから見てねぇかも…雨のせいだったのか…)
エアルは町の様子を思い出した。
「…私達そっちの東の方に行く予定なんですけど……」
「東へ行く!?それは難しいさ!」
リンは驚いたのか、ユノの言葉を遮り、声を張り上げた。
「えっ?どうしてですか?」
ユノは少し戸惑いながら尋ねた。
「うん、この町を過ぎたら国の警備も厳しくなるからさー、どこへ行くっても通行書が必要で自由に歩けないってこと」
「通行書はどこで貰えるんですか?」
エアルがすかさず聞く。
「ここから2日ほど東に歩いた所にある宮殿さ。でも…よそ者には難しいかもねぇ。最近は宮殿の様子がおかしくて…物を売り買いに出かけるってだけで大騒ぎだよ!」
リンはそう言って、迷惑そうに溜め息を吐いた。
「どうして?」
「良く分かんないんだけどね、隣国と戦争をするんじゃないかって睨んでるヤツがいる。本当のところは分からないけど。武器を生産してるのを見たって奴もいるし…」
(戦争……そんな…)
目を伏せて小さく震えるユノの肩を支えるようにエアルが抱き寄せ、耳元で小さく囁いた。
「ユノ、ディザルトの隣国と言えばウォルターだ。この二国は戦争は絶対できるはずがないんだ。それでもディザルトの宮殿にそういう様子があるとすれば………原因がアレにないとは言い切れない。俺たちが探してるモノに…」
「………メインブロック?」
ユノが顔を上げて小さく答えた。エアルが横で頷く。
二人の頭の中には同じ方程式が成り立っていた。


〜吟遊詩〜の最初へ 〜吟遊詩〜 36 〜吟遊詩〜 38 〜吟遊詩〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前