良子、サイトへ侵入す-5
『あーっ、まどろっこしい!何をグダグダやってるのよ!もう婚約したんだから、ここでの呼び方なんてイチイチ気にしなくていいの!マスター、いいえ、星司さんもよ!』
『そうですよ!名前で呼び合おうがセックスしようが、誰も文句を言いませんって!それよりも同棲を始めたんだから手島さんとは毎日ヤッてるんでしょ。それをここでも披露してくださいよ』
『そうよ!せっかくヤッてるのに隠すなんて狡いぞ』
『マスターベーションやオナニーを観せ合うのもいいけど、ライブでセックスが観たいしー』
『そうそう、【痴漢専用車両】が運行できない分、身体を張って観せてくださいよ』
『あたし、マスターと陽子さんのやつも観たいよお』
寛子に続いて由香里が言うと、他のゲストも続いた。
『ねえ、これってどういう事なの?』
ゲストの言葉が一通り過ぎた後、良子が口を聞いた。
『優子ちゃんのお母様も観たいでしょ。ほら、さっきも言ってたじゃないですか』
『えっ?という事は、こんなエッチなサイトまで作っておまんこやおちんちんを出しときながら、セックスを観せてないの?信じられないわ』
【痴漢専用車両】とそのサイトの創設に至った経緯を知らない良子は、卑猥な集団のクセに、その行為を突き詰めていない事に驚きと物足りなさを感じた。
『でっしょう。だから優子ちゃんのお母様から、身内として陽子さんに固すぎるって言ってくださいよ』
寛子が良子をけしかけた。
実は数日前、陽子と優子を除いたゲスト達が集まった事があった。その時の初めの目的は女同士の行為を楽しむ事だった。
因みに女性ゲストと男性プレイヤーの【痴漢専用車両】以外での交流は禁止にしていたが、ゲスト同士の交流の制限はしていない。その理由はプレイヤーの目的が痴漢冤罪に対する復讐に対して、ゲストの目的は欲求不満の解消が主だからだ。
プレイヤーとゲストの自由交流を可能にすれば、ゲストの女体に目が眩んだプレイヤーの目的意識が逸脱し、それが男女問題に発展して【痴漢専用車両】の存在が危ぶまれる可能性が考えられた。
それに対してゲスト同士の交流は、痴女になりうる女達の欲求不満解消につながる。ゲストの女達は優子と同様に性の対象に性別は関係していないため、気が向けば連絡を取り合いレズ行為で欲求不満を解消していた。
そんな背景の中、前述のとおり陽子と優子以外のゲスト達が集まった時の事。その際の女同士の痴態は割愛するが、レズ行為後の女子トークの内容が卑猥な話から【痴漢専用車両】の今後の在り方へと発展していったのだ。
【痴漢専用車両】運営がこれまでに準備していた各プレイヤー達の復讐は全て完了し、予期しない形で幸田美咲への復讐も終息していた。
そのため、現時点での【痴漢専用車両】の存在意義は、欲求不満を解消するゲストのためのみにあった。しかし、その【痴漢専用車両】は運行が中断し、再開の見通しも立っていないのが現状だった。
しばらくはレズ行為で満足していたゲスト達だったが、やはり複数の男に女体を蹂躙される悦びを欲し、女体の奥深くに放出される射精の快感と、その後のむせかえる精液の匂いと味に飢えていたのだ。その結果、ゲスト達は【痴漢専用車両】の規律の緩和を望むようになったのだ。それがゲスト達の総意である事を今回の集まりで確認しあった。
陽子もそれとなくゲスト達の希望に気付いているはずだ。だからといって、陽子から『幸田美咲への復讐が終息したから規則の緩和をします』とは、その性格上言い出し難いだろうとも理解していた。
だったら『ゲストからのお願い』として、寛子と由香里を中心に規律の緩和を陽子に申し出る事で話し合いはまとまった。
そんな背景の中、良子の登場は渡りに船だった。中々言い出す切っ掛けが無かった寛子は、新参者なれど陽子が無視できない良子を利用したのだ。
『わかりました。えーと、寛子さんね。寛子さんが仰るとおりだと思います。陽子さんがどうしてそんな規則を作ったかは知りませんが、エッチなゲストのみなさんは、現状に満足されてませんよ。ライブでセックスを晒す事の何が問題なの?』
良子が寛子の名前を確認しながら、年長者として陽子を諭した。
『優子さんのお母様、根本の問題はそれじゃないんです』
『由香里さんね。何が問題なの?』
『現在、【痴漢専用車両】が運行できない状況なので、ゲストとプレイヤーのフリーセックスを認めてもらいたいと思ってるんです』
今まで禁忌とされた運営の在り方、その核心に由香里が触れた。