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[有害図書]
【鬼畜 官能小説】

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[有害図書・前編]-7

『あの日記帳を俺だと思って……なんてな?俺は……あの日記帳を愛だと思ってるんだ……会えない時とか……ハハッ…キザったらしいか……」


「ッ!!」


幼い胸はズキンッと痛み、そしてどうしようもないくらいギューッと締め付けられる……格好つけた台詞と解っていても、尚人から発せられた力強い言葉が素敵な鼓動と同化して、愛の心身に行き渡る……。


『じゃあな。明日は日記帳忘れんなよ』

「わかってる!忘れないから……」


万感の思いに息苦しさを感じている最中、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
愛は後ろ髪を引かれる思いで尚人に手を振ると、急いで教室へと戻った。


(日記帳が私なんて……私も同じく思ってるよ、尚人さん…ッ)


先程の尚人の言葉に、愛の頭の中は妄想に支配されていた。
黒板は見ているようで見ておらず、教師の言葉も聞いているようで聞いてない。
ならば他の生徒はどうかと言えば、昼下がりの気怠さと睡魔に襲われ、やはり授業に集中してはいなかった。

午後の授業はダラダラと時間だけを経過させ、そして義務付けられた一日は何事もなく終わった……。






『え〜、不審者情報を載せたプリントを配布します。家に帰ったら必ず保護者の方々に見せるように』


担任教師の呼びかけも、今の愛には耳の隅にも入らない。

早く家に帰って日記帳を開きたい。
今の自分の思いの丈を書き綴り、この日記帳をもっともっと《私》にしたい。

帰りの挨拶もそこそこに、愛は喧騒を掻き分けて下足場に向かう。
そして何気なく妹の下足箱をチラリと見てみた。


(……帰ってる)


下足箱の中に、もう外履きの靴は無かった。
そういえば今日の夕方には、亜季の大好きなアニメが放送される。
それを観たくて一足先に帰宅したのだろう。


(煩い奴はいないし……フフフ……)


ウキウキしながら妄想を楽しむ愛の邪魔をする者はいない。
愛は亜季を追い掛けるでもなく、しかし早く自分の部屋に戻りたくて足早に帰宅の途につく……。


人も車も多く行き交う大通りの向こう、ポプラ並木の先に小さな少女が歩いている。
その50メートルほど先に居るのは、間違いなく妹の亜季だ。

やはりというべきか、亜季は愛が見つけた裏道へと入り、自宅への最短距離を選んで歩いていく。



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