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「そのチョコを食べ終わる頃には」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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『第3章 そのチョコを食べ終わる頃には』-6



「新しい年、二年生担当のみんなが幸せな一年になりますように、乾杯!」
 年が明けて、学年のスタッフ八人での新年会が始まった。学校の近く、駅ビルの二階にある居酒屋だった。このメンバーで四月から毎日生徒のためにがんばってきた。新年度が始まってすぐ職場体験学習、五月の体育大会、秋には文化祭、それから先月の十二月には修学旅行があった。二年生の学年を担当すると、一年がめまぐるしく過ぎていく。保護者からの期待もないがしろにはできないから、定期テストとは別に二ヶ月に一度は小さな一斉テストを行い、学力を高める努力もやってきた。登校を渋る生徒がいても、主任の沖田の的確な判断と行動力で、担任はそういう生徒の保護者ともいい関係を築くことができた。前に勤めていた学校と比べて、この新しい学校での仕事は全てが充実していて楽しかった。
「やっぱ主任が素晴らしいとうまくいきますね」
 私の横で飲んでいた若い数学教師田辺(25)が大声で言った。
「おだてても待遇は良くならんぞ」主任の沖田は笑いながらそう言うと、席を立ち、私の横にやって来た。
 彼はビールの瓶を持ち上げて、私に勧めながら言った。「篠原先生、もうひとがんばりだ。君のクラスはとても雰囲気が良くなったよ。目に見えて。担任の君がしっかり、誠実に育ててくれてるお陰だね」
「そんな……ありがとうございます。主任」
 私は恐縮してまだ三分の一ほどビールの残ったグラスを持ち上げた。
「大部分は主任のお陰です。この学校に来て初めての学年なのにとっても充実してます。教科面でも、クラスのことでも」
「君は生徒の扱いがうまくて、ほんと教師に向いてるよね。前からそう思ってた」
「そんな。私なんかまだまだです。沖田主任に比べたら」
「いやいや、僕が君ぐらいの歳であれだけの授業展開は到底できなかった。年末の研究授業は素晴らしかったよ」

 それはこの学校に来て初めての研究授業だった。市内の社会科教師が30人ほど集まる研究会で、私はかなりの緊張を強いられた。だが、例によって沖田が授業の進め方や資料の使い方について細かくアドバイスしてくれたお陰で、当日の授業も、その後の研究会もほぼ計画通りに進めることができて、私は大きな充実感と達成感を抱いていた。

「この後、」沖田は私の耳元で囁いた。「二人で飲み直さないかい? 君さえ良ければ」
 私は一瞬驚いた表情で沖田の顔を見た。彼はいつもの穏やかな微笑みを浮かべ、私の目を見つめていた。

 店を出て、沖田は他の二次会に流れるメンバーに、この後篠原先生と飲むことにした。教科のことで語り合いたくてな、とさらりと言って笑った。
「変な気をおこして利恵先生に手を出しちゃダメですよ、主任」
 足下をふらつかせながら先の数学教師田辺が言った。
「ばーか」
 沖田は軽蔑したようにそう言って、封筒を田辺に手渡した。「これで楽しんでくれ」
「お! お樽。 あざーす!」
 彼は大喜びでその封筒をひらひらさせながら叫んだ。「よし、みんな行こうぜ! カラオケで歌い初めじゃー!」

 一次会の居酒屋で、私はそれほど飲んだつもりはなかったが、沖田と二人きりになった時、私は自分の胸の辺りが熱を帯びていることに気づいた。
「何か食べたいものは? 篠原先生」
「え? いえ、もうお腹いっぱいで……」
「そう。じゃあ、コーヒーでも」
 私と沖田は繁華の外れにある喫茶店に入った。入り口の古く使い込まれたローズウッドの重いドアを開けて、沖田は私を中に促した。琥珀色の光が一つ一つのテーブルの上の丸い形のペンダントから控えめに差している。カウンター席が四つ、テーブルが三つだけの狭い店だった。香しいコーヒーの香りとジャズピアノが店内に流れていた。初老の物静かな男性が一人、奥のカウンター席にいた。


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