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「そのチョコを食べ終わる頃には」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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『第3章 そのチョコを食べ終わる頃には』-2

「こんにちは」
 ケネスと海晴と亜紀は思わず顔を見合わせ、吹き出した。
「絶妙なタイミングね。噂をすれば何とやら……」
 ケネスが立ち上がり、遼を店の中に招き入れた。
「寒いから早く入れよ」
 遼が後ろを向いてそう言うと、彼の背後にいた遙生が身を縮めて両手に息を吹きかけながら店内に足を踏み入れた。
「あれー、遙生くんも一緒?」
 亜紀が楽しそうに言った。
 遙生を先に店内に入らせた遼が驚いて言った。
「ん? 亜紀に姉貴、なんでここに?」
「女子会、ってとこかな。ケニーさんも無理矢理つき合わせてたの」
「すみません、ケニーさん、うちのかしましい女性たちを相手にしてもらっちゃって」
「かしましくて悪かったね」海晴が言った。
 遼は遙生の背中に手を当てて、隣のテーブルの椅子を勧めた。遙生は亜紀と海晴に向かってぺこりと頭を下げこんにちは、と言って座った。
 亜紀も海晴もにこにこしながらそれに応えた。
 海晴が訊いた。
「遼、なんで遙生くんと二人で?」
「部活中、篠原先生からケータイに電話があってさ、家族で食事に行くことにしているけど、今出先だから、部活が終わったら遙生を『シンチョコ』に連れて行って待たせておいてくれ、迎えに行くから、って言われたんだ」
 海晴は亜紀に耳打ちした。「作為的だよね」
「計画的ですね」

「何か飲む? 遙生」
「コーチは?」
「僕はいつもコーヒー」
「じゃ僕も」
「やめとけ」
「なんで?」
「子供にはまだ早い」
「僕、子供じゃないし」
「背伸びするな。ここはチョコレートハウス。絶品のホットチョコレートにしな」
 遙生は口を尖らせて、少し不満げに言った「……わかった」
 遼はケネスに目を向けた。
 ケネスはにこにこしながら一つ頷いた。「毎度おおきに」

 隣のテーブルで亜紀と海晴は満足そうにカップを傾けていた。
「ほのぼのしちゃう」
「ほんとですね」
 遙生がそのテーブルの上にあったチョコレートを目ざとく見つけた。
「あ! チョコだ、いいなー」
 亜紀が言った。
「食べてみる? 遙生くん」
「やめといた方がいいぞー」
 遼が呆れた様に眉尻を下げ、口角を上げた。
 亜紀に手渡されたブランデー・チョコレートを口に入れた遙生は思わず顔を顰めた。
「うえ! カラい! それに全然甘くない」
「言っただろ」
 遼は笑った。
 海晴も笑いながら言った。
「遙生くん、これはオトナのチョコ」
「中に入ってるのはお酒? もしかして」
「そう。ブランデー」
「ブランデー?」
 ケネスが二つのカップを遼と遙生が座ったテーブルに置いた。
「ブランデーにはな、遙生、チョコと同じく豊富なポリフェノールが含まれとってな、そのお陰で美肌効果があんねん。その上糖質ゼロ。そやからお年頃の女性には最適なんや」
「なによ、『お年頃』って、嫌味な言い方」
 海晴はケネスを睨んで頬を膨らませ、チョコレートをつまんだ。
 ケネスは笑った。「この芳醇な香りにはリラックス効果があって、質の良い眠りを保障してくれるんやで。まだ子供には早いけどな」
「僕にはムリ。苦すぎ。シンチョコのアソートの方がいい」
 遙生はそう言って、前に置かれたカップのホットチョコレートを慌てたように飲んだ。


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