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脅迫文=恋文?
【コメディ 恋愛小説】

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真夏の夜=2人っきりの夜(前編)-4

食事の時も、歯を磨きに洗面所に行ったらばったり会った時も、アタシは憲を無視した。
もしかしたら、初めてかもしれない。憲にあそこまで怒りを覚えたのは。
結局そのまま、消灯となった。男は二階、女は一階で雑魚寝。もちろん、消灯後に男女が会うのは……禁止。約束を破ったら、母さんの『恐怖のお仕置き』が待っている。 まぁ、会わないけど。
アタシの心象風景は、いじけて石を泉に投げ入れるって感じだ。
ふんだ。憲も、アタシの体しか見てないのか?もうちょっと、『カワイイ』とか『似合ってる』とか、気の利いた事は言えないのか?
「憲のバカ野郎」
「……はい、バカです」
後ろから声がしたので振り向いた。………誰もいない?
「上上」
上?
「今晩は、お嬢さん」
廃船から顔をのぞかせていた憲がそう言った。
「よっと」
そのまま、砂地に飛び降りて、アタシの横に座る。
「何だよ……アタシは許してないからな」
「良いよ。許してもらわなくても」
どういう意味だ?
「白雪が本当に許してないんなら、俺はここに座れない。座る前に、白雪が移動するだろ」
ふん。 どうせ、アタシは憲に甘いよ。
「……昼間は本当に悪かった」
「アタシはもう許してるんじゃなかったのか?」
「一応だよ」
微笑んでそう言う憲に、アタシも思わず微笑んでしまう。
「……何で、あんなことしたんだ?」
一応、聞いてみる。
「あぁ、可愛かったから」
さらっと、憲が言う。
「初めての時みたいに」
さらっと、更に言った……って!?
「憲!!!」
「デカい声出したら、お母さん起きちゃうぞ」
う、それはマズい。 でも、あんな事言うから!
「本当の事なんだから、仕方ないだろ?」
可笑しそうに、憲が笑いながらそう言う。
「だって!」
アタシの抗議を無視して、憲の口は更に動く。
「それに、あれは無かったよな。『一思いにやってくれ』」
う………。
「あ、あれは、仕方ないだろ!アタシだってなぁ、初めてで緊張して」
「まぁ、そんな所が尚更、可愛かった訳だけど」
ダメだ。やっぱり、アタシは憲には勝てない。 いや、まだ勝てるかも!
「じゃあ、アタシが憲のカワイイ所を見てやる!」
「おわっ!?」
憲を砂地に押し倒して、馬乗りに乗っかってやった。いきなりの事に慌てた憲は、無抵抗なままだ。
「白雪!?」
「大声出したら、母さんに見つかるぞ」
「……白雪、すげー意地悪い顔してる」
「いつもいつも、憲がアタシを好きなようにするからな。今日はアタシが好きなようにする!」
たまの攻守逆転も良いだろ?
「おい、まさか……ここで?」
「そうだ!」
「誰か来たら、どうするんだ!?昼間に見られたばかりだろ!?」
確かに、昼間に見られたアタシがこうするのは勇気がいるが、今は安全だと確信した上での行動だ。アタシをなめんなよ。
「麻衣と孝之は、向こうの岩場にいる」
「へっ!?」
「さっき見た」
あぁ、そりゃもうヤバいぐらいイチャつきながら歩いて行くのをな。
「母さんは寝てるだろうしな」
「おい、独と八木は?」
「外に出たら、母さんに殺されるって言っといた。さぁ、覚悟しろよ」
「あー、はいはい。負けました」
手を挙げて、降参のポーズをした憲とアタシの影が月明かりの下で重なった。


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