妙子-7
「研の言うことって何処まで本当なのか私分かんない」
「俺がお前に嘘なんか言ったことあるか？」
「さあ、嘘ばっかみたいな気がする」
「どんな嘘付いた」
「結婚するって言ったけどまだ結婚してくれないじゃない」
「お前なあ、結婚っていうのは俺が独りでするもんじゃ無いんだぞ。『お前なんか死ね、死んじまえ。お前が死なないんなら私が死んでやる』って大騒ぎして俺を追い出したのは誰なんだ。そんなんで結婚なんか出来る訳無いだろ」
「だってあれは研が久美ちゃんとおかしなことしてたからじゃない」
「おかしなことって何だ？」
「夜中に久美ちゃんの家に行ったじゃないの。知ってるんだから」
「だからそれは俺の仕事だ」
「仕事って何」
「史郎が出てくるまで久美の様子を時々見るっていうのが俺の仕事だ」
「史郎ちゃんと久美ちゃんとどういう関係があんのよ」
「だから出てきた時には好きなようにしてやるから自首しろって言ったら『それなら久美ちゃんと一緒にさせてくれ』って言ったんだ」
「そんなの久美ちゃんが厭だって言ったらどうしようも無いじゃない」
「だから色男の俺が史郎に代わって口説いたんだろ。史郎が出てきた時には史郎にくっつけてやろうと思って」
「口説いたってセックスまでしなきゃいけないの？」
「だから言っただろ。セックスなんてしてない。そんなことしたら史郎が可哀想じゃないか。俺のお古くれてやる訳にはいかないだろ」
「おっぱい吸うのはいいの？」
「おっぱいくらいはいいだろうよ。おっぱい吸ったって子供が出来る訳じゃあるまいし」
「そしたらセックスしたってスキン使えばいいってことになんじゃない」
「屁理屈言うな。お前は俺をけしかけてんのか？」
「けしかけて無いよ。それじゃ何でお前みたいなブスより久美みたいな美人の方がいいなんて言ったのよ」
「そんなことは言わんだろ」
「言った」
「言ったとしたらお前を愛してるからだろうな」
「私を愛してると何でそんなこと言うのよ」
「だから、おっぱい吸うというだけだってお前にとっては気分のいいことじゃないだろ？」
「当たり前じゃない」
「だろ？ それを史郎の為とは言え、やらなきゃならないんだから俺だって辛いんだ。お前を愛してるのに他の女のおっぱい吸ったりすんだからな。だから俺としてはお前に喧嘩でもして貰ってだな、少しは気楽になってから仕事をしようと思ったんだろうよ」
「それで久美ちゃんと自然解消したっていうのは何なの？ そんなんでいいんなら初めっからおっぱいなんか吸わなくたって良かったんじゃない」
「ああ、それはな。この間史郎に面会に行ったらもう久美のことは諦めるって言ってたから、そんなら俺が愛するお前をないがしろにしてだな、いつまでもあんな骸骨抱いてる必要は無い訳だ」
「骸骨抱いてる？ それじゃやっぱり久美ちゃんとやったんじゃない」
「違う、違う。抱いてるっていうのはそういう意味じゃない。おっぱい吸うったってお前、何かにつかまんなきゃ吸えないだろうが。パン食い競争じゃないんだから。やっぱ背中とか肩とか捕まって吸うだろ？ それを抱いてるって言っただけだ」
「本当？」
「本当さ。お前他の女とセックスしておいてオメオメとお前の所に顔なんか出せると思ってんのかよ」
「思ってる」
「あんだ？」
「嘘。思って無い」
「そうだろ。ほら、分かったら機嫌直してもっと寿司食え」
「もう食べらんない。みそ汁とお茶飲んだからお腹が張っちゃって」
「そうか。そりゃ残念だな。ま、寿司くらい何時でも食わしてやるから、それじゃ今日はその辺にしておけ」
「うん」
「それじゃ飲みに行くか」
「うん。久しぶりだね」
「そうだな。お前髪染めて可愛くなったじゃないか」
「有り難う。似合ってる？」
「ああ最高」
「髪伸ばしたのはどうかな？」
「それもいい。お前顔が丸いからその方が欠点をカバー出来る」
「欠点？」
「いや、欠点というより幼顔に見えるから長所と言うべきなんだろうが、もうそろそろ大人の女の色気を売り物にしてもいい頃だ」
「そうか」