第五話-2
鈍ゝ（のろのろ）とした足取りで湯殿の暖簾を潜り、二人は漸く、脱衣場に到着した。
「ほら、僕が帯を解いてやるから。其のまゝ洗い場に行くといい。」
「ありがとうございます。」
腰紐を解かれ、裸に為った夕子は辿々（たどたど）しい足取り乍ら洗い場に向かうと、力無くしゃがみ込んで、女陰から塵紙を剥がした。
（あら？）
塵紙を見ると、僅かに赤い物が付いているが、伝一郎が云った程では無い。不可解と云う顔をする夕子を見て、
「花門が固い上に、余程、聢（しっか）り押さえていたのだろう。これは開いて、掻き出すしか無いな。」
伝一郎は、助言すると共に夕子の前でしゃがみ込み、彼女の両膝を立て様とする。
「きゃ！何を！」
「何をって、手伝ってやるんじゃないか。ほら、足を開いて。」
「うう……。致した後、此の様な無体を受けるなんて、女子は、何処まで理不尽な生き物なんでしょう。」
ぶつぶつと慨嘆（がいたん）を表白（ひょうびゃく）する夕子を他所に、伝一郎は、その股を大きく開いた。
「ほら、女陰を大きく開いて。」
「は、はい……。」
夕子は、云われるまゝに自らの女陰に手を掛け、合わせ目を広げた。が、白濁した※４漿水（しょうすい）や未通女（おぼこ）の証と称される赤い物は、花門から僅かしか出て来ない。
「花門が固く閉じて、出て来れないよう様だな。致し方ない……。」
「嫌っ！な、何を。」
大きく開いた女陰に、突として顔を埋めた伝一郎。其の夢想だにしない出来事は、夕子を大いに狼狽えさせた。
「い、嫌あ……あ。」
じゅるじゅると云う音が洗い場に鳴り響く。伝一郎は口唇を女陰に密着させ、花門の奥を舌で掻き回し、奥の漿水を吸い出そうと試みる。
「や、めて……。ああ！」
夕子の身体に、再び情欲の焔が燃え上がった。
卑猥為る音の出処が自分だと云う事に辱し目を覚え乍らも、その実、心の奥底では齎（もたら）される悦楽を享受し、身を委せたいとさえ願っていた。
「いや！んっ……。んあ！」
責めに身を捩り、悶え喘ぐ夕子を面前にして、伝一郎の眼は幼子の如き笑みを浮かべた。
彼の心中に残存する、相手に辱しめを与え、苦悶する姿を見て享楽を覚えると云う“気違い”の部分が、頭を擡（もた）げていた。
「よし！此れで、粗方は取れたろう。」
後、一寸で気が昇ってしまうと夕子が感じた矢先、伝一郎は反応を見計らったかの如く、その口唇を女陰から外した。
「あ……。ああ。」
伝一郎の執拗な責めに依って、恍惚の形相を晒す夕子。最早、広げた股の女陰は口を空け、しとどに濡れた花門は意思を持つが如く蠕動（ぜんどう）を繰り返す──正に蛇の生殺しで有る。
「濫（みだ）りがましい女だな、夕子は。先刻、初めての目交わいを終えたばかりだと云うのに、又、こんなにして。」
上から覗き込む伝一郎の眼は、猟奇に充ちていた。
己の我欲の坩堝が果てる迄、この方は私を辱しめたいのだ──。快楽に依る忘我（ぼうが）の中で、夕子は伝一郎の心算（づもり）に勘付いた。
（だったら、その意を汲んでやらなくては……。）
朦然とする正気の中で、夕子は、自ら女陰を広げて、愛しい人の思うまゝに、為ろうとする。
「お、御願いです。御情けを……。此処が疼いて、仕方ありません。」
懇願する夕子の姿に、伝一郎は満足気に外道の如き笑みを湛えたまゝ、露になった花門に摩羅を突き挿れた。
「うぐっ！」
痛みが脳天へと突き抜ける。が、先刻の其れ程では無い。とは云え、快楽を伴う程でも無かった。
腰を振り、花門に突き立てた摩羅を抜き差しする伝一郎。夕子は、一突き毎に発する痛みに耐え乍らも、唯々、必死に縋（しが）み付く。
「ゆ、夕子！」
伝一郎は呻く様な声を挙げ、夕子に接吻を迫ると、喘ぐ夕子の口腔に舌を抉（こ）じ入れた。
「う！……。んんっ。」
舌の縺（もつ）れ合いは、夕子の身体の痛みを遠避けて行くに従い、代わって心地良さを齎（もたら）した。
頭の芯は痺れ出し、徐々に意識が蕩（とろ）け出すと、下腹辺りに微かな疼きの様な物を感じ取った。
疼きは脈打つ度、次第々に強さを増し、軈（やが）て、夕子の全身を駆け巡る。未知の感覚だが、其れは夕子に、総毛立つ程の快感を与えていた。
「あん！あん！あん！あん！」
突如、狂った様に悦びの声を挙げ出した夕子。其の変貌振りは声だけに止まらず、直ちに伝一郎も気付く事と為った。