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耀子
【SM 官能小説】

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耀子-5

 「誘いの電話はしたじゃないですか。先生が出なかっただけで」
 「そうか」
 「でも私の体が先生の好みのタイプであることは分かりました」
 「何で?」
 「だから『梨花』を読んだから」
 「なるほど」
 「先生は徹底的に大きなおっぱいが好きなんですよね」
 「そうなんだ」
 「小説っていうのはやっぱり本当のことを書くんですね」
 「本当のことも書くし、嘘のことも書く」
 「あの冒頭の場面のポルノ描写は本当のことなんですか?」
 「本当のこととは? 僕は『梨花』の主人公ほど若くは無いし、『梨花』のヒロインのような女性とも付き合っていないよ」
 「そうじゃなくて、あそこで主人公がヒロインにやっていることと言うか、二人でやってることは実際に先生が体験したことを書いてるんですか?」
 「さあね。どう思う?」
 「多分実際にやったことを書いているんだと思います」
 「それじゃ、そういうことにしておこう」
 「実はそうなんだと言うのが恥ずかしいからそんなこと仰ってる」
 「18の女の子が56の爺さんにそんなことを言ってはいかんよ」
 「又それを言う。年なんか関係ありませんよ」
 「僕が此処で実はそうなんだ、ああいうことを実際に経験しているんだと言ったとしてもそれが本当かどうか君には分からない。逆にあれは全部作り事だよと言っても本当かどうか分からない。唯ひとつ分かる事はあれを僕が書いたということだ」
 「どういう意味ですか? 誰か別の人が書いたなんて言ってませんよ」
 「そうじゃない。頭の中に無いことは書けないから書いたということは頭の中にあったということなんだ。それは分かるだろう?」
 「はい」
 「ということは実際にやったかどうかは別にしてあそこに書いてあるような事が僕の頭の中にあったということは否定出来ないと言っているんだ」
 「つまり少なくともああいうことをやってみたいと考えていた訳ですね」
 「まあ、やってみたいかどうかは別にしてそういうことを想像して書いたんだと言いたいところなんだが、やって見たいと思わないようなことは頭に浮かびもしないというのが本当の話だ。既に体験したかどうかは君の科白じゃないが秘密にしておく。しかし少なくともやってみたいことを書いていることになる。つまり小説を書くというのは駄洒落でも何でも無しに、恥をかくというのと一緒だ。小説家というのは、いや、全部の小説家がそうだという訳ではないだろうからポルノ作家はと言い替えるが、ポルノ作家は恥をかきながら金を稼いでいるんだ。コメディアンと同じだな」
 「どうしてですか?」
 「笑われてナンボという訳だ」
 「別にああいうのって恥だとは思いませんけど」
 「そうか?」
 「ええ。だってああいうのだって誰でも書ける訳じゃないですもの」
 「それはそうだ。書くのは別だ。思っていることなら誰でもそれを書けるという訳ではない。文章を書くというのは一種の技術なんだ。しかしそれは別にして、要するに性に関する欲望を頭の中に隠しておかないで文字にして一般に公開するという恥ずかしい事をしている。そしてそれを自分の商売にしているのがポルノ作家という訳だ」
 「それって恥ずかしいことかしら?」
 「恥ずかしい事じゃないか? 君だってこういうセックスをしたい、ああいうセックスをしたいと具体的なことを頭の中で想像することはあるんじゃないのか。だけどそれが頭の中にある限りはいいとして、それを人に知られたらやはり恥ずかしいだろう」
 「そうですね。やっぱり恥ずかしいかな」
 「だろう? それもハーレクインか何かに出てきそうなロマンティックで美しいセックスなら人に知られてもいいだろうが、僕の書く物は小便したり大便したりと汚いからね」
 「そうですね」


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