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亜美
【SM 官能小説】

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亜美-39

 「口を開けなさい」
 「あ」
 「あじゃない。口を開けなさい」
 そんな具合に誠司は無理やりケーキを食べさせられてしまった。何しろ男を無理やり好きにするのが彼女の仕事なのである。ケーキを食べさせるくらい彼女にとっては何でも無いことなのである。あまりの甘さに慌ててコーヒーを飲んだら、これが沸騰しているように熱くて、思わずむせてしまった。
 「あらあら、坊やはあわてんぼうね」
 そう言ってセシリアは無造作に誠司の隣に移ると誠司の顔をグイと抱き上げて、キスをした。やけどした舌をセシリアが吸い込んでべろべろ舐めている。突然のことで誠司は驚き、ただされるがままだった。
 「やけどは冷たい水で冷やすのが一番いいんだけど、舌というのは繊細な部分だからこうやって冷やすのが一番いいの。ほら、見てないでやってあげなさい」
 誠司の隣に座っていた礼子は操られるように誠司の顔を抱き、セシリアと同じように誠司の舌を吸った。しかし礼子の吸い方は、セシリアの無機質な吸い方とは全然異なり、まるで恋人同士がする情熱的なディープキスそのものだった。誠司は突然二人の女性から引き続いてキスをされて、呆然と抵抗もせずに舌を吸われていた。しかし、その内に礼子の手が誠司の体をまさぐり始めて、いつの間にか服の中に手をいれ、肌を直接さすり始めたときは驚くのを通り越して、気が遠くなりそうだった。
 「まあまあ、仲がよいのは結構だけど、そういうのは二人だけのときにして頂戴」
 セシリアがそう言いながら、誠司と礼子を引き離さなかったら、礼子は何処まで進んでいったのだろうか。誠司は、寄るところがありますからと言って、礼子と別れて帰った。あんなことのあった後に二人で一緒に歩くことなど出来ないという感じだった。しかし、あれは一体なんだったのだろう。何か恋人に振られたとか、何らか深い訳があるのではないだろうか。それにしても、誠司に対して特別の感情が無くて、あんなことが出来るものだろうか。誠司の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。礼子の態度に不審を感じたのは、実はそれだけではない。

 「何をぼんやり考えてるの? やっぱり彼女のことが好きなの?」
 「え? いえ、そうじゃありません」
 「それじゃ何?」
 「いえ、赤尾さんが僕のことを好きかどうか知りませんが、いずれにしても彼女は僕のタイプとは違います」
 「あら、それじゃ貴方のタイプはどういう女性?」
 「えっと、それは、勿論亜美さんです」
 「まあ、嬉しいこと言ってくれるのね」
 「そうでもありません」
 「そうでもありませんって、どういう意味?」
 「亜美さんのような美人を見れば男はみんなそう思うでしょう」
 「貴方は見かけによらずに女を喜ばせるのが上手ね」
 「いえ、正直な感想です」
 「私を初めて見たときにもそう思った?」
 「ええ勿論。亜美さんが何か光に包まれているみたいに見えました」
 「浣腸されて牛乳をお尻から飛ばしてるのを見たときもそう思った?」
 「ええ、思いました」
 「本当?」
 「ええ。こういう飛び切りの美人はお尻の穴の皺まで美しいんだなと感心しながら見てました」
 「まあ。そんなことを言ってもらうと、痛い思いをした甲斐があったわ」
 「え? 浣腸というのは痛いんですか?」
 「いいえ。浣腸のことじゃなくて」
 「それじゃ何のことですか?」
 亜美は、立ち上がるとタイツを脱ぎ始めた。なるほどその下には小さいと言うだけでは形容しつくせないような極小のパンティを穿いていた。パンティを脱ぐと左右のラビアに取り付けられた小さな鈴が、縦に二つ並んで半ば性器の中に埋まっていた。珍しい眺めに見とれていると、
 「そこを見てもらいたくて脱いだのではないの」と亜美が言う。
 「は?」
 「此処を見て頂戴」
 隷女亜美というタトゥーの上に『誠司の』という文字がある。
 「それは?」
 「私の気持ちを分かってもらうために、文字を足したの」
 「それもタトゥーですか?」
 「勿論」
 誠司は絶句して口も利けなかった。タトゥーといったら、手術しても完全には消えないのである。皮膚と皮下脂肪を切り取っても多少は残る。同じ色で上から文字が読めなくなるように墨を足すことは出来るだろうが、それにしても思い切ったことをするものである。



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