投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

亜美
【SM 官能小説】

亜美の最初へ 亜美 30 亜美 32 亜美の最後へ

亜美-31

 隷女亜美と相手の男も、誠司のそういう近頃の傾向からすると大きな興味の対象になっていた。あの2人の話を聞けば何か新味のある記事を作るヒントを得られそうな気がする。インポとSMプレイというのは何となく必然性を感じさせるし、処女とS男の出会いというのも面白い。それに何よりも亜美の美しさは絵になるし、そのことは写真を引き立てるという以上に記事を書く自分の意欲をかき立ててくれる。写真は顔を出してもいいということだったが、やはり雑誌の性質上会社の方針でなるべく出さないように自粛しているから、結局亜美の顔も目線で塗りつぶして出版した。自粛しているというより顔をストレートに載せると何だかプロのモデルを使ったやらせの撮影のように見えてしまって却って迫力がなくなってしまうのである。皮肉なものだ。
 という訳でいくら亜美が美人であってもそのことがストレートに大きな利点とはならないのだが、目線が入っていても全体の感じで美人かブスかはある程度分かるからやはり美人である方が良いに決まっている。体つきだってトドと亜美とでは写真の効果に雲泥の差が出る。いくらデブが好きだという男でも亜美の均整の取れた体を見て魅力を感じないということはないだろう。新幹線出口の方を向いてぼんやり視線を泳がせながらこんなことを考えていたら、亜美は待ち合わせの時間よりも先に着いていたらしくて背中から声を掛けられた。

 「お待ちになりましたか?」
 「あっ、いえ。ちょっと前に来たばかりです」
 「それでは取りあえず何処かに行きましょう」
 「あのー、今日はあの男の人・・・原田さんて言いましたっけ。あの人は?」
 「ああ、原田さんね。本当の名前は田原と言うんですよ」
 「田原さんですか。それで田原さんは?」
 「今日は私1人です」
 「えーと、それじゃともかく何処かでお話を伺いましょうか」
 「はい」
 「話の内容からして余り人に聞かれないような場所の方がいいですね」
 「はい。ですからホテルにしましょう」
 「ホテルですか」

 情けないことに、この時誠司の頭には亜美とSMプレイやセックスをすることなど全く浮かびもしなかった。頭に浮かんだのはホテル代のことである。何しろ取材費というのが殆ど出ない会社なので、極力金がかからないように何事も工夫しなければならないのである。まあホテル代くらいは持っているが給料日はまだ先だし、ちょっと困ったなと思ったが仕方ない。SMの話を喫茶店でする訳にもいかないだろうと覚悟を決めた。歌舞伎町裏の余り綺麗でないホテルを選んだのは平日時間無制限3999円と出ていたからで、2人でコーヒーを飲んでも新宿なら最低1000円はするから、3000円余分にかかるだけで済むと計算したのである。3000円なら毎日レストランで食べているランチをマクドナルドのハンバーガーに変えれば1週間か10日くらいで取り戻せるなと頭の中で計算していた。いざとなれば最初の給料で受け戻したローレックスを又質に入れればいいし、とそんなことを考えていた。
 ところがフロントで財布を出そうとした誠司の横から見かけに寄らない素早さで亜美がサッと1万円札を出して払ってしまった。亜美がお釣りと部屋の鍵を貰うのを待って1000円札で4000円を渡そうとしたら受け取らない。

 「私がお願いしたんですから」
 「でも」
 「いいえ、私の好きにさせて下さい」
 「それじゃ割り勘ということで半分僕に出させて下さい」
 「いいえ。そういう訳にはいきません」

 そう言い合っている内にエレベーターは4階に着き、部屋は直ぐ目の前である。まあ、部屋に入ってからにするかと思い、一旦金をポケットにしまってともかく2人で部屋に入った。建物はくすんだ見栄えのしないホテルだったが、中は綺麗だった。綺麗だったが非常に狭い。靴脱ぎ場に続いて小さなソファーセットのある部屋とも言えない猫の額のようなスペースがあるきりで、直ぐその横はもう大きなダブルベッドになる。見るからに座り心地の悪そうな小さなソファーでテーブルなどおもちゃのように小さい。ベッドだけでは格好が付かないから置いてあるというだけで、このソファーは脱いだ衣服を置く以外に実際座ったりする人はいないのではないだろうかと思う程である。こんなところで向かい合わせに座れば互いの頭がくっついてしまいそうである。


亜美の最初へ 亜美 30 亜美 32 亜美の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前